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トヨタも舵切るオープンイノベーション、日本発MaaSは成功できるか?

SAP NOW、オープンイノベーションのパネルより

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2018年8月20日
写真1:クルマからモビリティに向けたオープンイノベーションについて議論するパネリストら。左から、積水化学工業の林 巧 氏、rimOnO(リモノ)の伊藤 慎介 氏、トヨタ自動車の山本 昭雄 氏

日本の基幹産業である自動車。自動運転などデジタル化の影響は、自動車メーカーだけでなく、周辺部品メーカーや、新規参入を狙うスタートアップ企業の戦略にまでに広がっている。その自動車産業で、日本の強みを生かしたイノベーションは起こせるのだろうか。東京・港区で2018年8月2日に開かれた「SAP NOW」(主催SAPジャパン)におけるパネルディスカッションの内容を紹介する。(当日のディスカッション内容を再構成した。文中敬称略、所属・肩書きは開催当日時点のもの=DIGITAL X編集部)

 パネルディスカッションのテーマは、「産業の枠をこえてみんなで創造する新たなモビリティと愛されるクルマ〜日本産業界の将来を強くするオープンイノベーション〜」。一大変革期を迎えている自動車業界。クルマ造りから移動(モビリティ)のためのサービスシフトを実現するにおいて、従来の“ケイレツ”に代わるオープンイノベーション(共創)が起こせるかどうかである。

 登壇したのは、トヨタ自動車コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部 部長の山本 昭雄 氏と、自動車ベンチャーであるrimOnO(リモノ)代表取締役社長の伊藤 慎 介 氏、および積水化学工業 高機能プラスチックスカンパニー自動車・建築材料マーケティング部グローバルマーケティングダイレクター(欧州)の林 巧 氏の3人である。モデレーターを、SAPジャパン自動車産業コンピテンシーセンター センター長の小寺 健夫 氏が務めた。

 まず各社が、現在の取り組み状況をについて説明した。

MaaSはトヨタ一社では実現できない

 トヨタの山本氏が、これからのモビリティ像として紹介したのが「e-Palette Concept」。2018年1月に米ラスベガスで開かれた展示会「2018 International CES」で発表した次世代EV(電気自動車)である。

写真2:トヨタ自動車コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部 部長の山本 昭雄 氏

 e-Palette Conceptは、移動のほか物流や物販など多目的に利用できるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)専用に考えられている。そのコンセプトビデオでは、時間帯や走行場所に応じて、乗り合いバスやランチのデリバリーサービスカーなどに機能が切り替わる様子や、配送センターから最終目的地まで荷物を載せ替えなが走る自動宅配車としての動きなどが描かれている。

 山本氏は、「これからの時代、自動車はそれ単体の機能に加え、社会のデバイスとして多彩な移動手段を担うことになる。それにより社会全体へ提供できる価値が、これからのクルマの付加価値になる」と話す。

 今後の付加価値については、「(1)感動的な移動体験をもたらすドライバー視点、(2)交通事故や渋滞を減らす・なくすという社会的視点、(3)バリューチェーンの拡大やコト作りといった経営的視点の3つの視点で考えなければならない」(同)との考えだ。

 そのうえで山本氏は、「e-Palette Conceptに見られるMaaSはトヨタ1社で実現できるとは考えていない。みなさんの知恵を借りて実現したい」と、トヨタがオープンな姿勢にあることを強調した。