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デジタルトランスフォーメーションに向けた“技術と経営の融合”は起こるのか
戦略討論会 ~ 今求められる「技術と経営の融合」とは? 実践すべきデジタル戦略とアプローチを激論!~ より
産業を超えて新しい社会システムを作っていく時代
ADLジャパンの原田 裕介 氏(以下、原田) ADLジャパン マネージングパートナー・日本代表の原田です。
現代はパラダイムシフトの時代であり、産業を超えて新しい社会システムを作っていく時代です。
組織の変革は大きく意識、納得、行動に分けられますが、それを細分化すれば「諦観の壁」「自覚の壁」「認識の壁」「判断の壁」「実行の壁」「継続の壁」という6つの壁があります。中でもカギを握るのは、納得と行動に結びつく「諦観の壁」と「自覚の壁」です。
イノベーションを起こすリーダーシップのあるべき姿は、メンバーが自然と会話する組織です。「やってみせる」「メンバーを引っ張る」といった強制型・率先型ではありません。「構想型」「調整型」「民主型」「育成型」のリーダーシップが重要なのです。
パラダイムシフトと切り離せないのがDXですが、既存企業の改革においては最近の潮流「X by company」が有効でしょう。今の企業にデジタルを盛り込むのは難しい。ならば思い切って新しい会社を作り、デジタルネイティブな環境をそこに作ってしまうのです。
新しい会社を作らないと才能が集まってきません。時間を早め、才能を集め、速く立ち上げること。そしてデジタルネイティブを育てることが大切です。
DXのための文化や人材をどう創り上げるのか
ポジショントークに続く3者のパネルディスカッションでは、会場からの質問や意見に応える形で進行した。
――イノベーション創出において“文化”はどれだけ重要か
成迫 文化が何を指しているか分からないけれど、重要なのは、多様性があり、言いたいことが言えるかどうかです。心理的安全性とも言います。アジャイル開発・スクラム開発の現場でも心理的安全性が大切です。混成チームで顧客が混じっていても、末端のエンジニアが「それって本当に必要?」と言えることが重要です。
安田 これまで同じやり方だとDXの仕様書を作るといった話になってしまいます。文化というより、考え方ややり方を変えないと意味がないのだということを実感しています。
原田 イノベーションと一口に言っても企業によって問われる文化が異なります。たとえば米3Mは自由度が高いが、東京電力はとにかく安全が第一で、産業として勝手にはできない。これが「文化が違う」ということです。
たとえばプリンターでも、キャノンは内製で金型もあり、作り込んでいる。これに対し、カシオはコストパフォーマンスを重視し、感光体はどこからか買っている。同じ製品分野でも組織のあり方は全く違います。
もう1つ言えるのは、上層のデジタル時代のサービスを変えるには、下層にある価値観を変えなければなりません。
安田 文化を変えるには時間がかかります。会社にもよるでしょうが当社の場合は2年くらいです。人のマインドは、そうそう変わらないので、いろいろな取り組みが必要だと思います。
原田 文化を変えるのに、どれだけ時間がかかるのかではなく「文化は常に変えていかねばらない」ものです。組織文化は変革が必要で終わりがありません。終わった瞬間に、次の変化が絶対あるはずです。
成迫 私は会社全体の文化を変えるなんて大それたことは考えていません。突き詰めれば宗教や哲学、個人の価値観です。それがどうやって集団に絡んでいくかです。
全体を変えようとするのは間違っているのではないでしょうか。一部でも変えられれば仲間が増え、全体が底上げしようとなります。一部を変えると、そこに参画する人が増えるという流れです。全体でなく、一番尖った人が引っ張れば、そこに付いてくる人が出てきます。