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ワインづくりはAIでどう変わっていくか?サントリー×NSSOLがぶどうの収穫量を予測〔PR〕

2021年2月3日

高い予測精度を支える分析エンジンの開発を工夫

――予測結果はいかがでしたか。

徳竹  プロジェクトの目標は、予測値と実測値の誤差をプラスマイナス20%以内に抑えることでした。今回の予測値は実測値比でマイナス17%と目標範囲内に収められたので、ひとまず胸を撫で下ろしているところです。

 予測手法の汎用性検証の一環として、登美の丘ワイナリーでも同様に収穫量を予測しました。栽培法が違うぶどう畑ですが、同じくマイナス17%という結果が得られています。

高畑 紀宏 氏(以下、高畑)  NSSOLの IoXソリューション事業推進部 高畑 紀宏です。プロジェクト中は当社としても試行錯誤の連続でした。その中で特に精度向上に寄与したと考えられるのが、予測時の課題を分割し、アルゴリズムを使い分けたことでしょう。

 具体的には、撮影量を増やせる画像からのぶどう認識には、教師データが多いほど精度を高めやすいCNN(Convolutional Neural Network)という手法を、サンプルが少ない重量予測には線形回帰の手法を利用することで、精度を確実に底上げできたと思います。

鈴木  今回の結果から、AIを使った予測の妥当性を実証でき、確かな手応えを感じています。サントリー傘下の農業法人が運営するブドウ農園は全国にいくつかありますが、収穫量の予測精度は未だに農園ごとにばらつきが見られます。その補正においてAIは大いに力を発揮すると期待しています。

棚橋  ワインの生産性向上においても、先に説明した収穫量に合わせたタンクの選択以外への適用が考えられます、例えば、タンクに投入するぶどうの計量作業そのものをなくせる可能性がでてきます。今は10キロ単位のコンテナにぶどうを入れて計量していますが、データの蓄積により予測精度が高まれば計量は不要です。

 ワイン造りでは、人手で実施している作業が少なからずあるだけに、さまざまな効果が期待できます。

3Kイメージを覆すスマート農業でのAIの可能性

――今後のAI活用に向けた両者の展望を教えてください。

棚橋  本プロジェクト自体は2021年3月に実証期間を終えるので、ひとまずは終了です。ただ、これで「サヨウナラ」というわけではありません(笑)。

 ぶどう作りでは、収穫時期以外にも色んな作業があります。AIの力を確認できたことで、新たなアイデアがいくつも湧いてきていいます。例えば、春に若芽の数を算出できれば、その時期の作業内容の判断に役立てられます。実の着色度合いを読み取れれば、ワインの品質向上に寄与します。会社の判断もありますが今後も、NSSOLとともに前向きに取り組んでいければと思います。

森屋  ご期待に沿えるよう全力を尽くします。そのための我々への宿題は、「より現場を知ること」です。AIを使うことで多様なデータに基づく判断は可能になりますが、基準になるのは人が蓄積してきた経験とノウハウにほかなりません。それらを少しでも多く学べるよう、当社としては現場の方々とのつながりをさらに深めたいと考えています。

 そのうえで例えば、製鉄所の高炉内部の可視化のように醸造中のタンク内を可視化するなど当社独自の提案につなげられればと考えています。

棚橋  そのアイデアは良いですね。タンクの中か今、どうなっているかは、醸造家であれば、より良い酒造りのために誰しも興味があるものです。

 一方で我々としては、AI活用を含めたスマート農業により、自社農園はもとより、日本の将来に向けた農業改革に少しでも貢献したいとの思いがあります。

 ぶどうの生産量が増えない、そもそもの理由の1つに“3K(きつい・汚い・危険)”というイメージによる若者の農業離れがあります。「カッコ悪い」を加えて4Kなどとも言われています。現状、そのすべてを否定はできないでしょう。

 例えばこの農園でも、病害虫の被害を抑えるために広大な敷地を日々、つぶさに見て回っていますが、それだけでも決して楽な作業ではありません。さまざま技術の伝承が難しいこともあり、若者が定着しづらいのも事実ですし、収穫量も急には増やせないのです。

 しかし、AIなどを使った各種の自動化により作業量を軽減し、ノウハウを形式化できれば、キツさや汚さ、カッコ悪さなんかは解消できます。さらに収穫量や品質を高められれば、収益を高められ経済的にも魅力ある産業になる可能があります。

 ワイン製造業者である我々にとって農業は事業基盤なのです。就農人口の平均年齢が急速に高まる中、我々の取り組みが軌道に乗り、AIの有効性が広く認められることが、若者が農業に前向きに取り組める環境づくりを後押しできるはずです。そのためにも、私たちのような事業会社と、NSSOLのようなデジタル技術を扱う事業会社が、現場で手を組み合うことの重要性が、ますます高まっていくはずです。

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日鉄ソリューションズ