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ワインづくりはAIでどう変わっていくか?サントリー×NSSOLがぶどうの収穫量を予測〔PR〕
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国産ぶどうを使ってつくる「日本ワイン」の生産量トップを誇る山梨県。同県中央市の小高い丘の上で、サントリーワインインターナショナル(以下サントリー)が取り組む次世代のぶどう栽培に向けたスマート農業の実証畑がある。他の組織も含むコンソシーアムの枠組みの中で2019年からは、収穫量をAI(人工知能)で予測するプロジェクトに日鉄ソリューションズ(NSSOL)と共同で取り組み、2020年秋の収穫期に、その精度を検証した。サントリー×NSSOLで取り組むプロジェクトの狙いと、ぶどう作りにかける思いを中核メンバーが語った。(文中敬称略)
――小売店の店頭でも様々な果実酒(ワイン)が並ぶようになってきています。
棚橋 博史 氏(以下、棚橋) サントリーのワイン事業を担っているサントリーワインインターナショナルのワイン生産部 専任部長の棚橋 博史です。国税庁課税統計(2005年~2017年)によれば、国内の酒類総市場が頭打ちにある中で果実酒(ワイン)は出荷量の成長が続いています。
特に近年は、国産ぶどうだけで作った「日本ワイン」が2015年からの3年間で104%の伸びを見せています。「和食に合う」「作り手の顔が見える」といった点が日本ワインの人気につながり、市場全体を押し上げる一因になっています。
ワインはサントリーの原点です。1907年に発売した「赤玉ポートワイン」(現赤玉スイートワイン)が最初の商品でした。そこから100年以上、ワインの品質を高めるために上質なぶどう作りに取り組んでいます。
1936年には、「日本のワインぶどうの父」と呼ばれる川上 善兵衛 氏の協力を仰ぎ、ここ山梨で現在の「登美の丘ワイナリー」の前身となる壽屋(現サントリー)登美農園の運営に着手しました。以来、壽屋の技術者は農家や醸造家と協力しながら、ぶどうとワインの品質向上に取り組み、日本人の嗜好に合ったワインづくりができるようになったのです。
当社の「登美の丘」「ジャパンプレミアム」といった日本ワインは、幅広い層から大きな支持を集めています。
日本ワイン人気で国内産ぶどうが品不足に
ただワイン人気の一方で、日本ワインのための国内産ぶどう不足が課題になってきています。収穫が追い付かないうえに、ワインメーカーによるぶどうの確保も激化しています。このままでは日本ワインの提供量を増やしていくことも難しくなってしまう可能性があります。
そこでサントリーは、国内産ぶどうの安定確保のために2015年に農業生産法人を立ち上げ、2016年には山梨県・中央市の、この地に農園を造成しました。2018年に最初の苗を植え、幼木が成長することで、年を追うごとに収穫量が増える段階にまできました。
この農園の特徴は、土壌センサーや作業支援ロボットなどを活用するスマート農場であることです。その一環として2018年に着手したのが、AI(人工知能)技術を使って、ぶどうの収穫量を予測する取り組みです。
――ワイン造りにおいて収穫量の予測は、どれほど重要なのでしょうか。
鈴木 謙作 氏(以下、鈴木) サントリーワインインターナショナル 生産部 登美の丘ワイナリーの鈴木 謙作です。収穫量予測の一番の狙いは、収穫作業のための計画精度の向上です。収穫量の正確な予測は熟練農家でも難しく、そのことが農園経営における長年の課題の1つでした。
ぶどうの収穫には大きな労力が必要で、アルバイトの方などを含め多くの人の手を借りなければなりません。収穫量に対して人手が多すぎればコストに跳ね返り、少なすぎれば収穫期間が長引くことで後工程に遅れが出るだけでなく、ぶどうの品質にも悪影響を与えてしまいます。人手不足が深刻化している昨今では、収穫量の正確な予測は最適な人材確保が可能になり、その意義は小さくありません。
棚橋 予測精度が高まれば、ワインの生産効率の向上も見込めます。ワインづくりには、ぶどうを発酵させるためのタンクが必要ですが、収穫の予想量に合わせて必要なだけのタンクを空けて待機しなければなりません。収穫量が予想を下回ればタンクに空きが出てしまいますし、上回れば空のタンク探しに奔走することになります。いずれの予測が外れても生産性は低下してしまいます。
今回のプロジェクトは、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトとして採択された共同事業の1つです。2019年4月から2年がかりのプロジェクトですが、スマート化に向けたシステム面での取り組みは当社単独では難しいことから、日鉄ソリューションズ(NSSOL)と手を組むことになりました。