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下水道機器メーカーの石垣、機器の監視・予測・制御をスマホからできる「miyoru」を開発

Microsoft Azure使い必要な機能を自社開発

2022年7月29日

石垣は、下水から水を分離する脱水機やポンプのマーケットで大きなシェアを持つ下水道機器メーカー。ものづくり企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中、同社も2021年、本格的なDXプロジェクトを開始。自動運転型の水中ポンプにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーを装着することで、遠隔地からポンプの稼働状況をスマートフォンで確認できるクラウドサービス「ISHIGAKI Cyber Platform “miyoru”」を日本マイクロソフトが提供するサポートを活用しながら開発した。2022年8月の「下水道展’22東京」で初公開を予定する同サービスの開発背景とDXの取り組みについて、石垣の取締役執行役員である石垣 真一郎 氏と、情報システム課 課長の中村 晋 氏、および同社の支援を担当する日本マイクロソフト デジタルセールス事業本部の市川 健介 氏に聞いた。(文中敬称略)

――創業60年余の歴史を持つ石垣は、濾過器や脱水機、ポンプ等のリーディングカンパニーです。特に浄水場の最終処理工程で使われるフィルタープレス型脱水機の市場ではトップシェアを誇ります。

石垣 真一郎(以下、石垣) :取締役執行役員 企画推進部 部長の石垣 真一郎です。「フィルタープレス」については一般の方にはあまりなじみがないと思いますが、一言で言うと固体と液体を分離する「固液分離」のための機械です。脱水機には、フィルタープレス、スクリュープレス、真空脱水機、ベルトプレスなど数多くのタイプがあり、これらすべてのタイプを作っているメーカーは、国内では当社だけです。

写真1:石垣 取締役執行役員 企画推進部 部長 石垣 真一郎 氏

 さらに当社の特徴は、こうした製品単体の開発・製造・販売だけでなく、上下水道プラントやポンプ設備といった施設の設計から製造、施工から完成後の運転・維持・管理までをワンストップのソリューションとして提供できる総合力にあります。ポンプ設備などはいったん導入すると何十年にもわたって稼働するものも少なくありません。アフターサービスに大きな力を入れていることが特徴であり強みになっています。

――グローバル展開にも、業界ではかなり早くから取り組んでこられました。

石垣 :アメリカや中国向けの販売は20年くらい前から手がけてきました。近年はかなり良い手応えを感じるようになっています。特に中国は経済成長がめざましく、大きな市場になっています。アメリカや南米市場では、鉱山向けのフィルタープレスが非常に好調です。日本国内ではほとんど需要がない領域の製品を持っているのも当社ならではと自負しています。

 当社の場合、汎用的な製品は少なく、ほとんどが顧客ニーズに合わせて作っていく完全な個別受注生産品です。その点でも、ユーザーの要望を細かく聞き取り、機能要件や用途に最適な製品およびソリューションとして提供していくという点を非常に重視しています。

顧客の困りごとや課題への解決策をクラウドサービスとして実現

――ここ数年、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを本格的に進めてきたとのことですが、きっかけはなんだったのでしょう。

石垣 :最初は特にDXという意識はなく、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)で何かできないか」というところから始まりました。それも社内の各部門が、自分たちの興味でもって、あれこれ試しているという感じでした。

 しかし世の中的にも「DX」という言葉が流行りだし、私たちも取り残されないようにしないといけない。そこでIoTだけに限定せずに、いろいろな方向にチャレンジしてみようという全社的な動きとして、DX推進への取り組みが2020年頃に始まったのです。

 とはいえ、いわゆるDX推進室のような部門が主導する形ではありません。社内の各部門が、自分たちの顧客の困りごとや課題を出し合いながら、これまで蓄積したデータを活用して解決策を提案できないかというところを詰めていきました。

 そうした話し合いを繰り返す中で出てきたアイデアや企画をとりあえず一回集約し、クラウドサービスという形で作ってみたのが「ISHIGAKI Cyber Platform “miyoru”」(以下、miyoru)です。2022年8月の「下水道展’22東京」で初めてご覧いただけます。