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物流DXに取り組む業界トップ企業が描く物流のこれから

CIO Japan Summit 2022パネルディスカッションより

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2023年1月6日

日本の物流業界は、ドライバー不足や環境対策など、業界として解決していかなければならない課題を抱えている。その解消に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)には、どのように取り組んでいけば良いのか。アスクル、日本郵便、野村不動産で物流DXを担当する各氏が、2022年11月に開かれた「CIO Japan Summit 2022」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン)のパネルディスカッション「異例の共演:新たな物流DXのカタチ」に登壇し、意見を交わした。モデレーターは、セイノーホールディングス 執行役員 ラストワンマイル推進チーム担当の河合 秀治 氏が務めた。(文中敬称略)

 ディスカッションを前に、物流業界が抱える課題について、モデレーターのセイノーホールディングス 執行役員 ラストワンマイル推進チーム担当の河合 秀治 氏が説明した。

写真1:セイノーホールディングス 執行役員 ラストワンマイル推進チーム担当の河合 秀治 氏

人手不足から宅配便の増加、残業規制、環境問題まで課題は幅広い

 『我が国の物流を取り巻く現状と取組状況』(経済産業省・国土交通省・農林水産省、2022年9月2日)によれば、日本には現在、約6万3000のトラック事業者が存在する。だが、その99.9%が中小企業だ。「DX(デジタルトランスフォーメーション)領域に予算に投じられない環境にあり、DXが進まない」という課題に直面している。

 予算以前に、トラックドライバーの数は減少し、高齢化が進んでいる。加えて、営業用トラックの積載率が「40%を切っている」という問題もある。混載が進めば解決できるかもしれないが、「デジタル化が進んでいないため、シェアリングのためのマッチングも、なかなか進まない」のが現状だ。

 一方で、EC(電子商取引)化率の上昇により宅配便の利用が増えている。大手運送会社による宅配便の取り扱い数は年間56億個。「統計から漏れている分を含めれば年間80億個にまで伸びている」とみられる。

 しかも宅配便の場合、商品単位で購入するケースが増えており、荷物の大きさは小さくなる傾向がある。宅配時の不在率も10数%ある。「置き配」の浸透により一時期は下がったものの再び上がりつつあるという。

 さらに2024年度からは、「物流の2024年問題」と呼ばれる、ドライバーの時間外労働への上限規制が始まる。「これまでの物流は時間外労働によって支えられてきたと言える。生産性を高めなければ物流は立ちいかなくなる」。これに加えて環境負荷対策も議論していかなければならないのが、今の物流業界の姿である。

地域の共同輸配送や機械化・自動化を推進

河合 秀治 氏(以下、河合)  上記のような業界の課題に対して今、どのように挑戦しようとしていますか。

早川 典雄 氏(以下、早川)  SIP地域物流ネットワーク化推進協議会 事務局長の早川 典雄です。当協議会は、内閣府が推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において、地域物流モデルの社会実装を目的に発足しました。現在の会員数は124で、その構成は、荷主企業が33%、運送事業者が36%、その他(ITやデベロッパー)が31%になっています。

写真2:SIP地域物流ネットワーク化推進協議会 事務局長の早川 典雄 氏

 社会実装に向け積極的に取り組んでいるのは、地域の異業種による共同輸配送です。SIPのスマート物流プロジェクト「SIPスマート物流サービス」で構築した「商流需給オープンプラットフォーム」と「物流需給オープンプラットフォーム」を活用します。対象は、1運送1件当たりに換算すると800キログラムから5トン未満の中ロットのパレット貨物で、「異業種の共同物流化」「輸配送の平準化」「輸送工程の分割(ドライバー分業)」「時間指定の緩和」などにチャレンジしています。