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“人”の体験価値を高めるDX、小野薬品工業×NSSOLが取り組むヘルスケアデータ活用の“攻め”と“守り”
データの入口から出口までを織り込んだ匿名化・仮名化を実現
- 提供:
- 日鉄ソリューションズ
データの加工や提供のためのルールの決定がカギに
匿名加工・仮名加工を簡単に説明すれば、法律に定められた基準に基づいて、特定の個人が識別できないように個人情報を加工することです。具体的には、データを削除したり、一見ランダムに見える文字列や一般化した値に置き換えたりします。この処理はNSDDDが持つ機能で実現可能です。
しかし、その際に重要なのは、その加工方法や提供方法を定めることです。そのためには、(1)データの二次利用の目的、(2)データに関わる法令/契約の順守、(3)データが含む項目と意味の調査と正しい理解が不可欠です。
各種要件を満たす加工方法や提供時のルールについては、山下様や小野薬品の法務部門の担当者様と共に検討し、最終的には「個人データ加工審査委員会」という会議体が、適切に判断されているかを審査し確定します。こうした業務プロセスや、OASISが対象にするデータごとに策定した個別ルールは「データセキュリティ・ガイドライン」という文書にまとめ蓄積しています。
山下 :補足すると、ガイドラインには「リスクベースアプローチ」という概念を落とし込んでいます。このアプローチにより、情報の削除や加工によって再識別リスクが低減する一方で研究などに必要な情報も同時に失われてしまうというジレンマを解消しているのです。
具体的には、データ利用者のリスクを踏まえたうえで、リスクをどの程度許容するかを評価する「事前リスク評価」の後に、「再識別リスクを低減するための加工設計」を施し、加工後のデータに「安全性・有用性の問題がないかの評価」をすることによって実現しています。
波多野 卓磨(以下、波多野) :NSSOLシステム研究開発センター 主務研究員の波多野 卓磨です。研究開発部門に所属し、プライバシー保護技術の研究と実適用を担当しています。
実のところ、匿名加工・仮名加工に必要な技術自体は決して難しいものではありません。ただ蓮井が説明したように、どの法制度・契約を参照して、どう加工・提供すべきかを決める際に配慮すべき点が多いことが、難易度を高めています。その難易度の高さは、実際の案件に携わって初めて気づけました。
例えば、プライバシー保護技術に関する学会では、先進的な技術を用いた新しいデータ活用手法が提案されています。一方で、実際に技術を現場に適用するためには、業界や業務ごとの法制度やルールなどの制約への対応も検討する必要があります。先進技術の実用化を担う部門の一員として、必要な匿名・仮名加工に、まずは人手で対応しながら、効率化・省力化に向けた課題の抽出と研究テーマの検討を継続しています。
山下 :データ活用が本格化してくれば、扱うデータの量や種類も急増し、その利用目的も多様化するはずです。そうなれば、匿名・仮名加工への対応負荷が課題になると想定できます。パートナーであるNSSOLと協力しながら対応していきたいと考えています。
データ活用の本格化に伴う変化に備える
──今後の取り組みについて、教えてください。
山下 :OASISで活用できるデータのさらなる拡充を図っていきます。OASISによるデータ活用は、医療・ヘルスケアに関わるすべての人の体験価値の向上や、創薬における開発期間の短縮など多様な可能性を秘めています。その推進・拡大のために、デジタル・IT部門は、あらゆる手を尽くしていきます。さらに当社の取り組みを社外にも発信し、製薬業界全体のデータ活用拡大に貢献したいと考えています。
蓮井 :OASISを基盤とした社内外のデータ流通における効率化・省力化の実現に取り組んでいきます。当社研究開発部門と連携し、データに関わる法令・契約の調査の効率を高めるためのプロセス改善や、OASISプロジェクトで得られたノウハウを生かしたNSDDDへの機能追加を進めていきます。
波多野 :当社事業部門と連携したプロジェクト支援に並行して、小野薬品工業様と連携した対外発信に取り組みたいです。プライバシー保護技術の学会や製薬業界に向けたセミナーなどで、OASISの匿名・仮名加工の事例を共有させていただき、プライバシー保護技術の実適用と利用拡大を図りたいです。
──ありがとうございました。