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CXの向上には顧客に接する従業員が使う業務システムの体験価値向上が不可欠

書籍『エクスペリエンス指向のシステム開発』を日鉄ソリューションズが書いた理由

2024年7月24日

アジャイル開発とクラウド環境が不可欠に

──書籍では、アジャイル開発とクラウド環境の必要性についても説いています。

秋葉 :まずアジャイル開発ですが、確実に言えることの1つは、今の時代に極めて合致した開発手法だということです。

 変化が激しい今、設計から運用開始まで数年を要するウォーターフォール型開発では、開発中にシステム化の前提が変わってしまってもおかしくはありません。そこでは、小さな開発を積み重ねながら継続的かつ迅速に見直しをかけるアジャイル開発の有効性は明らかです。エクスペリエンス指向でも、業務課題のすべてを一気に解決することは現実問題として困難です。改修の反復を通じて理想の環境に着実に近づける必要があります。

 一方のクラウド環境は、未来への適切な投資という観点から不可欠な存在です。オンプレミス環境では技術の進化が早いこともあり改修が一筋縄ではいきません。そのため、かつてはリソースに一定の余裕をもたせて環境を整備したものの、結局はそこまでは使われず、余分な投資に終わることもしばしば発生しました。

 クラウド環境なら、必要に応じて、その都度、リソースの調整が容易であり、システム基盤を迅速に整備できます。システム基盤の整備においてROIは永遠の命題であるだけに、クラウド環境はもはや当たり前に利用すべきものだと言えます。

増田 :技術的には、継続的な開発と本番適用を可能にするCI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery & Deployment)環境などの整備も必要になってきます。ただ、技術やフレームワークは、解決策として何を目指すかで一定水準以上の知見があれば必然的に決まります。特に難しく考える必要はありませんし、必要に応じて当社がサポートすることもできます。

顧客に業務の進め方の変更を提案することの重責を感じ研鑽を積む

──エクスペリエンス指向の広がりに向けて今後は何に取り組みますか。

斉藤 :これまで、エクスペリエンス指向での開発は小規模システムを対象に提案してきました。今後は、エクスペリエンス指向のメリットをより広く享受してもらえるよう、大規模システムにも提案範囲を拡大します。そのため、大規模システムだからこそ必要になる技術的な方法論を現在、システム研究開発センターのサービスデザイン研究部が中心になって研究活動をしています。当社自身の社内システムを“実験場”としてエクスペリエンス指向での開発を進めている最中です。

惠島 :そのUX(User Experience:利用者体験)領域の指揮を私が執っています。そもそも大規模システムは継続的な改修が想定されておらず、技術面や組織面での苦労が少なくありません。一方で、UIを少し改修しただけでも現場からは大きな反響が寄せられるなど、従業員に着実に価値を届けられている実感があります。従業員に目を向けた開発は、小さな変化でも大きな効果を発揮できることを肌で感じています。同じ感覚を、エクスペリエンス指向による開発を実践していくなかで、システム開発に携わる全員に是非とも味わってほしいです。

増田 :従来のシステム開発では不可欠だったRFP(提案依頼書)の作成も、エクスペリエンス指向では開発側からの提案により不要になるケースも増えています。顧客となる企業の業務部門からの期待に応え続けることが当社の責務です。

秋葉 :エクスペリエンス指向を推進するにあたり我々は、蓄積した実績を基に、他社に対して新たな進め方を採用する必要性を訴えられるという稀有な立場にあります。その重責を理解したうえで、顧客と共にプロダクト作りや運用をやり切る力の質を、より磨き上げていかねばなりません。

向 正道 :NSSOL 人事本部 採用・人材開発センター 専門部長の向 正道です。私もこれまでに、IT戦略やIT組織運営のコンサルティングなどを手掛けてきましたが、現在の職責からいえば、少子高齢化が進み職場環境の改善が企業にとって大きなテーマになるなか、エクスペリエンス指向は、より良い職場づくりに向けた当社の強力な武器になるでしょう。

写真5:『エクスペリエンス指向のシステム開発 従業員体験が顧客体験を高める』を執筆したNSSOLアカデミー・サービスデザインワーキンググループのみなさん。左から惠島氏、秋葉氏、斉藤氏、増田氏(向氏は当日、オンラインで参加した)

『エクスペリエンス指向のシステム開発 従業員体験が顧客体験を高める』

著者:NSSOLアカデミー・サービスデザインワーキンググループ

サイズ:A5判

ページ数:176ページ

価格:1980円(本体 1800円+税10%)

ISBN:9784295019053

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