• UseCase
  • 公共

サッカーワールドカップのドイツ代表チーム、対戦相手の弱点を発見するビデオ画像分析システムを導入

DIGITAL X 編集部
2018年6月20日

サッカーのワールドカップ・ロシア大会に参戦するドイツチームは、対戦相手の弱点を見つけ出すシステムを導入している。過去の試合のビデオ画像などを分析するシステムをソフト開発会社大手の独SAPと開発した。独SAPが2018年6月15日に発表した。

 ドイツサッカー連盟(DFB)が導入しているのは、「SAP Sports One」というシステム。過去の試合のビデオ画像や、練習時の選手の動きといったデータをAI(人工知能)や機械学習で分析し、対戦相手のまだ明らかになっていなかった弱点を特定する。そのうえで、その弱点を突くための戦略やパターン、選手の動きなどを見いだす。

 SAP Sports Oneは、大きく2つの機能を持つ。1つは、対戦相手の弱点や、それを突くための動きなどを表示する「ビデオコックピット」。もう1つは、対戦相手の弱点について、選手1人ひとりに合わせた情報やビデオ画像を提示する「プレイヤーダッシュボード」である。ダッシュボードはタブレットなどのモバイル機器で動作するアプリケーションとして提供する。

 これら2つの機能は、SAP Sports Oneの最新機能である。チームの運営、トレーニングとチームの管理、スカウト、医療などDFBがこなしているプロセス全体を一体化し、チームと組織のパフォーマンスをデータに基づき管理できるようにする。

 ドイツ代表サッカーチームのスカウトとマッチアナリストの責任者であるChristofer Clemens(クリストファー・クレメンス)氏は、データ分析システムの必要性を次のように述べている。

「サッカーの戦術的側面はますます重要になっている。コーチ、アシスタントコーチ、およびマッチアナリストは、試合のさまざまなデータソースを観察し、分析することに、さらに注力している。特に、データ分析や、AI、機械学習といった技術革新を活かすことで、特定のプロセスを簡略化し加速することは理にかなっている。新機能により、コーチと選手は次の試合のためにカスタマイズした情報を受け取れ、チームは、より効率的に準備できるようになる」

 ドイツ代表チームがSAPとの共同開発に取り組んだのは、2013年から。ビッグデータから、トレーニングと試合のパフォーマンスに競争優位性を提供するための洞察をリアルタイムに得られるようにした。2014年の前回大会でドイツ代表チームは優勝している。

 その後、2014年に、フィールドでのチームパフォーマンスに重要な洞察を提供する「SAP Match Insightsソリューション」と、選手とコーチの情報の伝達・共有を支援するモバイルアプリケーション「SAP Team Oneモバイルアプリ」を開発した。2016年には、「SAP Penalty Insights Webアプリケーション」と「SAP Challenger Insightsモバイルアプリ」を開発し、対戦相手の動きとフォーメーションの分析にも取り組んでいる。

 今後も、試合内容の分析にAIなどを適用していく考えで、パターン検知と位置データから、試合中の対戦相手の動きをより速く特定できるようにするとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ドイツサッカー連盟(DFB:Deutscher Fußball Bund)
業種公共
地域ドイツ・フランクフルト
課題選手の特性や健康状態を加味しながら、試合で最高の結果が出せるように準備したい
解決の仕組みビデオ画像や練習の情報などをまとめて分析することで、対戦相手の弱点を突くための動きや戦略をはじき出す
推進母体/体制ドイツサッカー連盟、独SAP
活用しているデータさまざまな相手との試合の様子を捉えたビデオ画像、練習中の選手のデータなど
採用している製品/サービス/技術SAP Sports One(独SAP製)
稼働時期2013年から順次、機能を拡張してきている