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ディノス・セシール、デジタル時代にアナログメディアを重視した顧客接点戦略で差別化
カタログ通販・テレビ通販のディノス・セシールは、カタログやDM(ダイレクトメール)などの紙メディアと、EC(電子商取引)サイトやCRM(顧客関係管理)などのデジタルテクノロジーを連携し、通販事業を展開している。なぜ紙などのアナログメディアを併用するのか。EC戦略を担うCECO(Chief e-Commerce Officer)である石川 森生 氏が「DIGITAL X DAY 2019」(主催:インプレスDIGITAL X)に登壇し解説した。
ディノス・セシールは、「ディノス」と「セシール」の2つのブランドが合併して誕生した通販サービス会社である。ディノスはフジテレビのテレビ通販が主軸で、セシールは女性もののインナー事業を柱とした総合カタログ通販という特色を持つ。現在も、それぞれのブランドを生かした通販サービスを提供している。
両ブランドの特徴について同社CECO(Chief e-Commerce Officer)の石川 森生 氏は、「ディノスはテレビマン発想の文化、いつの時代も受ける商品を探してくる。セシールは良いものを作って安く売るというモノづくり発想の会社だ」と表現する(写真1)。そのためEC(電子商取引)においても、「両社の文化が違うため変に2つのサイトを融合しようとはしていない」(同)という方針を採っている。
国内のBtoC(企業対個人)のECマーケットは、2018年時点で約18兆円、EC化率は6%強である(経済産業省調べ)。ただ市場規模自体は、中国、アメリカ、イギリスに続き日本は4位である(米eMarketer調べ)。この数字を石川氏は「EC化率は低いのにマーケットシェアが4番目ということは、日本には良いマーケットが残っていると言える」とみる。
AmazonがECにおけるUX論争に終止符
ただ「現在のマーケット、は戦いにくい環境に陥っている」と石川氏は指摘する。Amazon.comや、楽天、ヤフージャパンなどモール系のサイトがシェアを持ち、単独ではZOZOやビッグカメラ、LOHACOなどがマーケットを作りトレンドを形成している状況だからだ。
さらに石川氏は、「デジタルビジネスの側面では「Amazonという大きな存在が流れを変えた」と語る。「ECは当初、UX(ユーザーエクスペリエンス)の文脈で競っていたが、その戦いをAmazonが終わらせた」(同)。つまり、以前はどんなページ構成が利用者にとって使いやすいか、売り上げに結び付くかを必死に競っていたのに対し、Amazonは購入ボタンを押せば翌日には商品が届くというサービスを開始した。「このシステム以上のUXはなく、UXに対する議論を終わらせた」(同)のだ。
結果、UXに代わり登場したのがCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験))である。「サイトの中身ではなく“お客様”の体験全体でパフォーマンスを向上させるために何をすべきかに目線が移ってきている」(石川氏)。購入後にストレスを感じない商品配達やコールセンターでの適切な問い合わせ対応といったCXが「顧客のエンゲージメントや売り上げに直結することがわかってきた」(同)のである。
ECビジネスの競争ポイントは購入直前に
CX重視のECビジネスの構造として石川氏が示したのが「パーチェス・ファネル」というモデルである(写真2)。消費者が、どこで商品/サービス情報を仕入れ、興味を持ち、比較検討し、購入するかという流れを示している。ここでは「ECサイト自体は、後半にしか出てこない」と石川氏は指摘する。
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