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小田急、データを活用し安心・快適な新モビリティライフを実現へ

「Mobility Transformation 2020 Online」より

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2020年6月2日

柔軟な料金体系を実現するスマホアプリ「EMot」を開発

 3つのなかで先行するのが、(2)の運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化を実現するためのアプリケーション「EMot」だ(図3)。EMotは「Emotion」と「Mobility」を掛け合わせた造語で、「日々の行動の利便性をより高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみ方を見つけられることを目指している」(西村氏)

図3:「EMot」は運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化への取り組み

 EMotの機能は大きく2つある。1つは複合経路検索機能。鉄道路線の検索に加え、タクシー、カーシェア、バイクシェアなどのモビリティサービスの予約・決済ができる。タクシー検索では、配車サービスの「MOV」(DeNA製)と「JapanTaxi」(Mobility Technologies製)の双方の概ねの料金と所要時間などを表示する。ここで、たとえばMOVを選べばMOVのアプリが立ち上がりタクシーを呼べる。

 もう1つは電子チケット機能。「交通系チケットに加え、飲食のサブスクリプションや生活サービスと融合も図っている」(西村氏)。交通系チケットでは、駅や旅行代理店でしか購入できなかった「箱根フリーパスチケット」をEMotから購入可能にし、画面が、そのままチケットになるようにした。静岡・浜松の遠州鉄道のフリーパスチケットも購入できる。

 飲食・生活関連では、小田急の商業施設「新百合ヶ丘エルミロード」で2500円以上買い物した顧客にバス無料チケットを2枚付与したり、小田急グループの飲食店7店舗で使えるサブスクリプション型チケットを購入できるようにしたりしている。

事業者連携基盤「MaaS Japan」を構築

 このEMotを含め事業者間連携が動き出している。「EMotでチケットを販売する遠州鉄道を含め、連携する企業社数は10数を数える。ほかにも、他の交通事業者や自治体などからも『MaaSを展開したい』と多くの声をいただいている」と西村氏は明かす。

 そのために小田急が開発したのが「MaaS Japan」というオープンな共通データ基盤だ(図4)。EMotと同等の機能を連携する各社が展開できるようにする。たとえばA電鉄用のMaaSアプリの開発では、フロント画面を開発するだけでEMotと同等の機能が提供できる。「交通事業者にとっては投資の抑制に、アプリの利用者にはユーザービリティの向上に貢献できる」と西村氏は話す。

図4:データ共有基盤「MaaS Japan」による事業者間連携を進める

 事業者連携の具体例の1つに、東京都が2020年2月に実施したMaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験がある。小田急のMaaS JapanとJR東日本が持つモビリティリンケージプラットフォームの機能を使って「立川おでかけアプリ」を作成した。

 電子チケット機能では、、小田急バスの1dayチケットと多摩モノレールの企画チケットを購入できるようにした。経路検索機能では、立川バス(小田急グループ)とJR中央線、同南武線のリアルタイムデータを取り込み、運行遅れなどを考慮した結果を表示できるようにした。

 西村氏は、「今回は実証実験だったが、将来的な実現を目指し、JR東日本と経路検索機能を提供しているヴァル研究所と共に開発を続けていきたい」と意気込む。