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小田急、データを活用し安心・快適な新モビリティライフを実現へ

「Mobility Transformation 2020 Online」より

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2020年6月2日

自動運転バスやオンデマンド交通の実証に取り組む

 新型の輸送サービスへの取り組みでは、夏に江ノ島での自動運転バスの実証実験を2018年と2019年に実施。2019年冬には多摩ニュータウンでも実証実験を実施した(図5)。「小田急グループにはバス会社が、小田急バス、立川バス、神奈中バスなど数社がある。各社と共に自動運転バスの実証実験をこれからも進めていきたい」(西村氏)という。

図5:2018年、2019年には江ノ島や多摩ニュータウンで自動運転バスの実証実験を実施した

 オンデマンド交通の実証実験も開始した。2020年2月17日にスタートした「しんゆりシャトル」がそれだ(新型コロナウイルス感染症の拡大により4月7日に中止)。約500カ所の乗降地点を設け、目的に最も近い地点で乗り降りする「バスとタクシーの間にあるモビリティサービス」(西村氏)である。

 利用する際は、出発地を指定してから目的地を指定するだけ。すると「約1分後に到着、乗車時間は約4分、降車後約1分徒歩」などの利用条件が提示される。その条件でよければ「予約」ボタンを押し、出発地で車を待てばよい。

 西村氏は、「タクシーとの違いは乗降場所が決まってことと、相乗りができること。買い物や通院、塾の送迎など、少し歩くかもしれないけれど車の運転は任せしたいという“隙間ニーズ”を狙う。実用化に向けてさらに実験を重ねていきたい」と語る。

モビリティを機軸に生活を便利に・お得に

 こうした移動のためのサービスに続き小田急は、小田急沿線での家族見守りサービス「SmartDrive Families」(SmartDrive製)の提供を2020年3月に開始した。

 SmartDriveのCRO レベニュー責任者である弘中 丈巳 氏は、SmartDrive Familiesについて、「目的は大きく2つある。1つは1人ひとりの安全運転をうながし“ヒヤリハットポイント”を住民で共有することで、安心・快適のためのまちづくりをすること。もう1つは、モビリティを機軸に生活を便利に・お得にすることで愛着のまちづくりをすることだ」と話す(図6)。

図6:モビリティを基軸に愛着のあるまちづくりを目指す

 「将来的には『SmartDrive Cars』の安全運転に対するポイント付与機能を活用し、免許返納者や運転に不安を覚える方へ公共交通の利用を提案したい。正しくモビリティを使うことで、安心・安全、お得に生活ができる、まちづくりを共に実現していきたい」と弘中氏は協業への期待を述べる。

 さらに「急激な社会環境の変化に耐えうる未来を作るには、業界の垣根を越えた協力・共創体制が重要になる。持続可能な社会にするには、コマース系アプリや自動運転といったツールだけではなく、まちのビジョンを共有しサービスを共創していく必要がある」という。

 小田急の西村氏は「小田急を利用されるお客様や沿線住民に愛着を持ってもらえるよう、安心・快適な新しいモビリティライフをまちに定着させたい。車の所有から公共交通サービスを中心としたモビリティサービスへ転換し、持続可能なまちを創っていくことが、我々が目指すMaaSの未来だ」と強調する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名小田急電鉄
業種交通
地域東京都新宿区(本社)
課題「人の移動」を前提にした鉄道中心の多角化経営モデルが、少子高齢化やネット化の影響により厳しくなるなかで、まちや暮らしを中心にした新たなビジネスモデルを確立したい
解決の仕組みMaaS(Mobility as a Service)を含めた住民サービスの提供に舵を切る
推進母体/体制小田急電鉄、スマートドライブ、各種の提携企業
活用しているデータ移動や購買に関する各種のデータなど
採用している製品/サービス/技術電子決済用アプリ「EMot」、データ連携基盤「MaaS Japan」、自動運転技術、オンデマンド交通「しんゆりシャトル」、家族の見守りサービス「SmartDrive Families」(SmartDrive製)など
稼働時期2019年10月(EMotのサービス開始時期)