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CEOが望むDXの目的は「コスト削減」と「売り上げ向上」しかない
タッパーウェアブランズ・ジャパン 代表取締役社長 石井 恵三 氏
予測データはダイナミックプライシングや倉庫配置にも活用する
マーケットの予測データができれば次は、そのデータを他のシステムと連動させて、業務を自動化する。
エクスペディア時代の石井氏は、「グーグル検索で『地名+ホテル』と入れれば上位に出るように、キーワード広告を大量に購入していた。オークション制のため、条件を入れると最適な価格で落札できるシステムを使っていた。このシステムを予測データと連携させ、最も売り上げが伸びるエリアの広告を最適な費用対効果で購入できた」と話す。
予測データは、マーケティング施策だけでなく、販売にも生かせる。「ダイナミック・プライシングの実現」(石井氏)だ。需要の変化に応じて価格を細かく変更することで売り上げを最大化する。コカ・コーラ時代に「米国ではマクドナルドの商品価格が州によって3倍も違う。日本でもこれができないか」と考えて実行したといる。
具体的には、予測データを基に、商品の価格を地域やチャネルの別に小まめに変える仕組みを開発した。「価格を10円程度変えるだけでも、全国で大量に販売している商品だけに、その影響が大きい」(石井氏)という。基幹システムのデータとも連携し、「売れない状況では在庫管理とディスカウントを天秤にかけ、収益の最大化が図れた」(同)と話す。
在庫管理について石井氏は、「大企業ほど店頭の“棚落ち(在庫切れ)”を恐れ販売店の近くに倉庫を設置してしまう」と指摘する。これも、予測データを活用すれば、倉庫を集約しても棚落ちがないようにコントロールできるとする。
「しっかりとデータを見ることで、90%は工場やハブ倉庫からの直送でカバーできると考えている。それによって、特に都市部の倉庫費用の負担を減らせる」(石井氏)とする。
CIO、CDO、CFOの3者からなるコミッティの設立を
こうした施策を実行するうえでのCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)の役割について、石井氏は、こう指摘する。
「DXの主役は、ITサイドの代弁者であるCIOと、ビジネスサイドのCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)、そしてファイナンスサイドのCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の3人だと考えている。ビジネスに偏りすぎてもIT寄りでも成功しない。これら3人がチームとして動き、コミッティとしてDXの最高機関になる必要がある」(図4)
そのうえで、「新しいビジネスのアイデアはトップダウンではなく、ボトムアップで現場から吸い上げていく必要がある」(石井氏)とする。「現場から出てきたアイデアを3人のコミッティで受け止めることが非常に重要だ」(同)からだ。
そのためCIOやIT部門にあっては、「デジタルが分からない人に対しても敷居を下げ、開かれた存在になる必要がある」(石井氏)とする。その一環として、「社員のアイデアをテンプレート化し提案しやすい仕組みを作ることも重要だ」(同)とアドバイスする。
【CIO Japan Summit 2022】
主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン・リミテッド
日程:2022年5月10日・11日(火・水)
会場:ホテル椿山荘東京