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CEOが望むDXの目的は「コスト削減」と「売り上げ向上」しかない

タッパーウェアブランズ・ジャパン 代表取締役社長 石井 恵三 氏

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2022年4月22日

デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが本格化するなか、デジタル化そのものを目的化する動きも散見させる。そうしたなか、日本コカ・コーラのCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)などを歴任してきたタッパーウェアブランズ・ジャパン代表取締役社長の石井 恵三 氏が、東京で2021年11月に開催された「CIO JAPAN SUMMIT 2021」(主催:マーカスエバンズ)に登壇し、日本企業におけるDXの指針やCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)の役割について提言した。

 タッパーウェアブランズ・ジャパン代表取締役社長の石井 恵三 氏はこれまでに、AOLやAmazon.comの日本法人でマネジャー職の後、エクペディアジャパンの代表取締役社長、日本コカ・コーラのCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を勤めるなどデジタル分野での経験が長い。2021年から現在のポジションに就き、タッパーウェアのデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。

写真:デジタル分野での経験が長いタッパーウェアブランズ・ジャパン代表取締役社長の石井 恵三 氏

デジタル化が目的となったDXは失敗する

 「デジタル化のためのDXを行っていないか?」−−。石井氏は、こう問いかける。もし、「デジタル化しなければいけないと思ってDXを進めようとしている」ならば、「デジタル化は目的でなく手段。目的を持たずに始めるDXは必ず失敗する。そうした例をいくつも見てきた。永遠に目的を達成しないままDXを続けることになる」と石井氏は警鐘を鳴らす。

 DXに成功するためには、「最初に目的、次に戦略、そしてアクションプランという順番で考えなければならない。特に開発が大きくなればなるほど、この順番が大事だ」と石井氏は強調する(図1)。

図1:DXの成功には、「目的、戦略、アクションプラン」の順番が大事

 この順序を食事を例にとると次のようになるという。「目的なく行動するということは、夕食に何を食べるかを決めないまま、手元にネギがあたったからと切り始めてしまうことを指す。『何を食べたいか』という目的を定めたうえで、食事を作るのか外食するのか、それともUber Eatsを頼むのか。こうした戦略を考えたうえで作るなら調理を始める。そうしなければ目的は達成されない」(石井氏)

 夕食であれば思っていたのとは異なる料理を食べても、まだ取り返しがつく。しかしこれが、「1億円がかかる開発において、異なるものを作ってしまっては洒落にならない。にもかかわらず、かなり多くの企業が、そうしたことをやってしまっている」と石井氏は指摘する。

 そのうえで石井氏は、「DXの目的は大きく、(1)オペレーションを最適化してコストを削減することと、(2)売り上げを伸ばしてマーケットシェアを拡大することの2つしかない」と断言する(図2)。

図2:DXの目的達成は(1)コスト削減と(2)売り上げの向上しかない

 「逆に言えば、これら2つを達成できならデジタル化する必要すらないかもしれない。しかし、データを分析したり、SaaS(Software as a Service)を使えば売り上げを伸ばしやすくなったりするからデジタルを使うわけだ。ここを踏み違えると第1歩目で失敗してしまう」(石井氏)