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住友化学、事業の競争力確保に向けた「DX戦略2.0」を1年前倒しで始動
住友化学 デジタル革新部長 金子 正吾 氏
「DX戦略2.0」は各事業部門がオーナーとして進める
住友化学におけるDXの取り組みは2019年度に始まった。同年度からの中期経営計画の中で、工場、研究開発、サプライチェーン、バックオフィスの4領域に絞り込み業務プロセスの生産性向上に着手した。これを同社は「DX戦略1.0」と呼んでいる。
当初計画から1年前倒しし、2021年度から「DX戦略2.0」の取り組みを開始した。各事業部門が、デジタル活用による顧客接点強化や顧客満足度向上による付加価値創出を図り、事業の競争力を確保するのが目的だ。前倒しの理由を金子氏は「コロナ禍によって社会の変化が非常に早くなったため」と説明する。
具体的には、スペシャリティ・ケミカルの領域では、独自の素材開発による市場開拓や顧客ニーズに基づく顧客・用途別商品開発を目的に、デジタルマーケティングやCRM、AI(人工知能)技術を活用している。バルク・ケミカルの領域では、サプライチェーンの最適化・合理化によってグローバル競争を勝ち抜くコストダウンを図る。
「既存顧客に対しては、少量多品種生産や受注生産への効率的な対応が必要になる。新規顧客に対しては、市場ニーズをいち早くつかみ、社内のシーズとマッチングできるかが成否を分ける。そこではデジタルをどう使うかがポイントになる」(金子氏)
「DX戦略2.0」の取り組みと並行し、「DX戦略3.0」の取り組みも着手した。DX戦略3.0では、データやデジタルを活用することで新たなビジネスモデルを実現するのが目標だ。
DX戦略1.0は、内部プロセスの効率化、生産性向上を目的に、「Plant、R&D、SCM、Officeそれぞれの業務領域のベストプラクティスを現場へ展開すればよく、コーポレート主導で進められた」(金子氏)。だが事業の競争力を強化するDX戦略2.0と、新たな成長を担うDX戦略3.0は、「事業ごとに競争環境や成長戦略が異なり、事業戦略を実現する手段としてDXを活用する上で各事業部門がオーナーになって進める必要がある」(同)。
そこで現在は、主導者である事業部門を、基盤整備や人材育成などの面からコーポレート部門が支援する体制を採っている。同時に、コンサルティング大手のアクセンチュアとのジョイントベンチャー(JV)となる新会社「SUMIKA DX ACCENT」を設立した。
「以前からアクセンチュアとはDXパートナーとして協力関係にあった。だが、さらにJVを作ることで、個々のDXプロジェクトを加速できるとともに、プロジェクトを通じてアクセンチュアがもつ最新のDXのノウハウをよりタイムリーに住友化学に導入し蓄積できる。最終的に社内にDX推進のナレッジやケイパビリティを持つことが目的だ」と金子氏は、JVを選択した理由を説明する。