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SMBCグループ、AI・データの活用で現場の可視化や新サービス開発を加速
三井住友フィナンシャルグループ/三井住友銀行 データマネジメント部長 江藤 敏宏 氏
【単独インタビュー】データマネジメント部長の江藤 敏宏 氏に聞く
――生成AI技術の業務活用を始めているが、社内の反応はどうか。
社内で利用しているチャットボットのようなユーザーインタフェースのため、「ちょっとした物事を調べるのに向いていて便利だ」と言われている。自分で何かを調べたり要約したりといった業務は、かなり効率化されているのではないか。
ただ、利用者はまだ本部の人間が多いかもしれない。営業店でも利用可能だが、バリバリ使っているという状況までにはなっていない。営業店はルールや事務手続きが多いだけに、それらを学習させれば、より使えるようになるかもしれない。
現在、活用のためのナレッジを貯めている最中だ。従業員からも社内SNSなどに色々な書き込みが見られる。好事例やアイデア募集も進めるなどバリエーションを増やそうとしている。経営企画部で業務効率化を推進するグループが旗振り役を担っている。
――顧客向けサービスにおける生成AI技術の可能性を、どうとらえているか。
取引先企業の業務の効率化を図れるようなサービスの開発を考えている。ただ、顧客とのやり取りに生成AI技術を活用するのはハードルが高い。チャットボットでの代替やオペレーターを介さない応答などが考えられるが、まだまだと感じる。顧客に間違えたことを伝えてしまうのが一番まずい。著作権やコンプライアンスなども含めて慎重な対応が必要だろう。
当行のコンタクトセンターでは、2014年から「Watson」(米IBM製)のAI技術を導入している。オペレーターに対し、顧客との対話内容をテキスト化し、「尋ねられているのは、これではないか」という回答例を提示する仕組みを実現した。今後、生成AI技術を活用して回答案を作成するなど、こうした業務をより高度化できるのではないかと考えている。
――全社の情報閲覧基盤である「Tableau」のダッシュボードは現場に浸透しているか。
現在、ダッシュボードの利用は、各部門の統括部署や商品・サービスの企画部署などが中心だ。商品の企画部署では自身のプロダクトの現状を把握したり、営業店をサポートするための情報を提供したりするダッシュボードを作っている。従来はExcelで作成しメールで送るという非常にレガシーなやり方だったが、今はダッシュボードをそのまま顧客とのディスカッション資料にできるようになっている。
営業管理用のダッシュボードでは、エリア別、支店別、営業担当別に、それぞれの成績がドリルダウンでき、提案や成約までのすべてが見える。営業担当者からは嫌がられるかもしれないが(笑)。
導入当初は、何ができるのかを知らしめるのが大変だった。だが、ツールを手にすると「これまでの作業をこう変えられる」「Excelマクロでの手作業がなくせる」と気付く層もおり、現場もすぐに使うようになるのだと感じた。
一方で、ユースケースをパッと思いつく人ばかりではないので、ダッシュボード作成に必要な基本的なスキルを身に付けてもらうために、データマネジメント部が伴走したりセールスフォースにワークショップ的なものを開いてもらったりもしている。
――データマネジメント部の人材確保・育成策は。
私が部長に就いた2021年以後、規模が大きくなり当時から10人くらい増えた。2023年7月時点の人員数は約60人だが、採用をさらに進めている。
新卒採用について講演では、総合職を対象にした「データサイエンスコース」を紹介したが、それ以前の2019年からは対象を理系の大学院生に限定した「デジタライゼーションコース」を展開してきた。新設のデータサイエンスコースではその制限を撤廃し、より広いバックグラウンドを持つ優秀な人材を募っている。
ビジネス部門から異動するケースもある。元々ITをやっていた人が来ることもあれば、「データサイエンスをやりたい」と言って海外留学し帰国後にデータマネジメント部に来た例もある。営業店でデータ活用に実際に触れたことから「データ活用をやりたい」というモチベーションを持って来る人もいる。
また、データ分析やAI技術活用など“攻め”の部分だけでなく、“守り・ガバナンス”の領域に対して必要な人材もグローバルに増やしている。ITやインフラストラクチャー、ツールの企画に携わる人材もいる。
――ビジネスデータプランナーを重視する理由は。
IT関係の経験がある人材は専門スキルは高いが、ビジネス知見に関しては前線にいる営業担当者などと比べると、まだ弱い。データ活用においては、実際のビジネス課題を踏まえた上で、このような課題に対してどのようなデータを使えば解決につながるか、などを考えることが重要だと思っている。ビジネス企画や商品企画を担当するような人にビジネスデータプランナーとしての知見をしっかりと身に付けさせることで、ビジネス課題の解決に貢献したい。