• UseCase
  • 製造

シール材のバルカー、SaaS事業を拡大し半導体装置メーカー向けサービスを開始

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年3月21日

寸法と数量の入力だけで見積もりを作成

 Quick Valueでの見積もり依頼では、調達者は樹脂製品の内径・幅・厚さと数量を入力すれば良い(図1)。直接入力のほか、2D(2次元)図面や3D(3次元)モデルのデータをアップロードすることで数値を自動で入力できる。数量を変更しての再見積もり依頼も可能である。

図1:「Quick Value(クイックバリュー)」の見積もり依頼時の寸法入力の画面

 入力データと、加工業者の空き状況や納期などのデータから、条件に合う加工業者をAI(人工知能)技術で選定し、その加工業者に依頼した際の見積もりを自動で作成する。見積もりにかかる時間は原則2時間以内としている。

 見積もり結果は、(1)価格優先、(2)納期優先の2パターンで表示する(図2)。価格優先は、価格と納期のバランスを取りながらバルカーが推奨する見積もり。納期優先は、最短納期になる見積もりである。結果は見積書として出力・送信し、正式な発注依頼が来るまでを管理する。進捗状況は案件一覧で確認できる。

図2:「Quick Value(クイックバリュー)」の見積もり表示画面

 サービス開始時に自動見積もりが可能な材質はPTFEのみ。加工方法は、回転刃物を用いたマシニング加工や、回転する材料に工具を当てる旋盤加工などの切削加工に対応する。加工を手掛ける事業会社はQuick Valueが定める品質基準を満たすのが条件で「数十社と連携している」(中澤氏)という。アカウント登録と見積もり作成機能は無料で提供する。発注成立時は製品代のみを請求し、樹脂事業本体の売上拡大を期待する。

 今後は、「2024年度はPTFE領域における知見を深めデータを蓄積し、2025年度にはグローバル展開を目指すとともに、他の高機能エンジニアリングプラスチック(エンプラ)に対応できるようにする。2026年度には溶接方式など加工が難しい製品や特注品なども自動で見積もれるようにする」(神田氏)計画だ。

 Quick Valueの立ち上げにおいては、2023年6月にデジタル戦略本部を立ち上げ、新サービスの開発に取り組んできた。システムの正確性を保つための第三者検証などでは、デジタル技術を活用したサービス開発コンサルティングを手掛けるモンスターラボから品質保証の支援を受けた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名バルカー
業種製造
地域東京都品川区
課題70年取り組んできた樹脂加工セクターでリーダー的地位を確立したい
解決の仕組み半導体装置メーカーと、樹脂加工事業者間の見積もり作業を自動化するSaaSを投入し、加工事業者の見積もり負荷を軽減することで小規模案件など新規顧客の開拓を支援し、樹脂事業の拡大につなげる
推進母体/体制バルカー、モンスターラボ
活用しているデータ部品の寸法データと数量、加工業者の設備や加工種別、空き状況、納期データなど
採用している製品/サービス/技術サービスの第三者検証(モンスターラボ製)
稼働時期2024年3月5日(サービス提供開始日)