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中部電力パワーグリッド、ドローンによる遠隔点検を電線や鉄塔にも拡大

DIGITAL X 編集部
2024年8月29日

送配電事業者の中部電力パワーグリッドは、電線や鉄塔設備をドローンで撮影し、遠隔から点検するためのAI(人工知能)システムを、ドローン事業を手掛けるセンシンロボティクスと共同開発した。送電設備の点検現場に2024年度中に導入する。2024年8月6日に発表した。

 送配電や託送を手掛ける中部電力パワーグリッドが開発したのは、電線や鉄塔の異常をドローンで撮影した映像からAI(人工知能)技術で自動判定する仕組み(図1)。2023年に送電設備の異常を点検する仕組みを開発・導入済みで、対象を電線や鉄塔にまで広げることで、遠隔保守のさらなる自動化を図り、点検員による現地訪問などを削減するのが目的だ。2024年度中に現場に導入する。

図1:保守アプリケーション「POWER GRID Check」の概要

 電線の点検では、設備の脱落を検出する(図2)。電線の振動や着雪の成長を抑制する「ダンパ」の重りの脱落や、電線を規定の間隔に保つ「スペーサー」の把持(はじ)部の外れなどだ。判定結果は、ドローンの映像とともに、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末上で閲覧できる。

図2:ダンパ(左)とスペーサーの検出例。モバイル端末上で確認できる

 鉄塔設備では、ボルトの脱落や鉄塔の錆を検出する(図3)。鉄塔の種類と塗装色別に学習したAIモデルを利用する。鉄塔は、山形の鋼材を使用したアングル鉄塔と筒状の鋼材を使用したパイプ鉄塔の2種、塗装は、未塗装、防錆塗装、航空標識塗装、環境塗装の4種である。錆の度合いに応じてランクを分類し、色分けして表示する。

図3:鉄塔の錆をAIが検出したイメージ(左)と、検出前の鉄塔のイメージ

 システムは、架空送電設備の保守向けアプリケーション「POWER GRID Check」(センシンロボティクス製)上で開発した。中部電力パワーグリッドは、電力設備の保守・運用に関する専門知識やノウハウを提供している。今後は、AIモデルの継続的な学習を進めると同時に、利用者のフィードバックをもとにアルゴリズムの選定や再学習を実施し、精度や使い勝手を高めるとする。

 中部電力パワーグリッドは、2021年に送電設備自動点検技術の現場運用を開始。2023年に電線の断裂や溶損、電線と設備を絶縁する碍子(がいし)の破損などの異常を検出するAIを開発した。

 今後は、一般配送電事業全体をカバーできるよう、変電設備へのAI技術適用を研究する。2025年度以降に、計器の数値や状態を遠隔監視する仕組みを実現し、変電設備の保守・保全を対象にしたアプリケーションを導入したい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名中部電力パワーグリッド
業種公共
地域名古屋市東区(本社)
課題送電設備の保守業務に関わる現地調査や移動コストを削減したい
解決の仕組み送電設備の異常を検出するAIシステムを開発し、遠隔からの点検を可能にする。そのために異常を検出できる対象を広げていく
推進母体/体制中部電力パワーグリッド、センシンロボティクス
活用しているデータドローンで撮影した設備の画像
採用している製品/サービス/技術架空送電設備の保守向けアプリケーション「POWER GRID Check」(センシンロボティクス製)
稼働時期2024年度(電線と鉄塔を対象にした仕組みの実運用開始時期)