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JFEスチール、製鉄所の自動操業を目標に品質・製造データを一元管理する基盤「J-DNexus」を稼働
「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo」より、JFEスチール DX戦略本部 DX企画部の愛甲 貴広 氏
【単独インタビュー】DX企画部 主査の愛甲 貴広 氏に聞く(聞き手は佐久間 太郎 = DIGITAL X 編集部)
――製鉄業界は今、どのような課題に直面しているか。
グローバル競争を強いられる厳しい環境にある。DXは生産性を高め収益力を強化するための手段である。一方で、CO2削減などGX(グリーントランスフォーメーション)にも取り組まなくてはならない。
製鉄は、製造の初期段階から石炭を利用しており、構造的に環境負荷が高い産業だ。最近は、石炭を使わない電気炉の導入にも取り組んでいるが、大規模な高炉の全てを置き換えられるわけではない。
運用中の「エネルギー需給ガイダンスシステム」は、製造中に生まれるガスに着目し、それを無駄にせず最大限に活用するのが狙いだ。今後はデータ基盤である「Cognite Data Fusion(CDF)」によるデータ統合をさらに進めながら、将来的には設備管理の効率化などにも取り組みたい。
――クラウド基盤「J-DNexus」は製造現場に、どのような効果を生んでいるか。
J-DNexusでは各工程において、品質に関連する温度・成分などの検査データや表面欠陥検査データなども統合している。
製品品質は、温度や冷却方法、成分調整といった要素の影響を受ける。従来は、不良の発生要因の解析に手間がかかっていた。品質データと操業条件データをCDFで紐づけることで、要因に当たりをつけるまでの時間を短縮できている。現時点では、特定の複数プロセスにおける鋼板の品質や工程のデータまでが統合できている。
要因はAI(人工知能)モデルを使って推定している。そうして見つけた要因の発生工程に対し製造条件の見直しなどを操業担当の技術スタッフなどと議論しながら決めている。このリードタイムの短縮は大きな効果の1つだ。
――DX戦略の推進におけるDX戦略本部の役割は。
製鉄業界に限らず、人材がなかなか採用できないという時代が来ている。日本全体で人材不足が進む中、持続的に成長していくためにはDXの推進が必要であり、そのDX推進のためには中長期的なビジョンと戦略が必要だ。DX戦略本部では、それらを立案・企画し、実行するのが役割である。
戦略本部内にあるDX企画部は複数のグループに分かれ、DX戦略の企画や、データサイエンス技術の展開、ロボティクスの適応、外販ソリューションの拡大などを担っている。DX企画部には現在、他部署との兼務者を含めて20人ほどが属している。
私自身は2005年にJFEスチールに入社してからの10年間、制御・電気系エンジニアとして技術開発や設備保全に従事した。その後、火力発電所の建設プロジェクトに参加した。2020年からは本社のデータサイエンスプロジェクト部(当時)でデータサイエンス活用企画推進と現場がデジタルの取り組みを加速できるよう、インフラ整備やDXツールなどの開発支援機能の導入を担当してきた。
――人材不足に対しては何に取り組んでいるか。
DX人材の育成、中でもデータサイエンティストの育成に力を入れている。2023年度末時点で累計610人を育成し、24年度末の目標だった600人以上を1年間前倒しして達成できた。部署や業務によってデータを扱う深度が異なるため、全ての社員がハイレベルな教育を受ける必要はないとは考えるが、個人の習熟度や必要な業務のランクに応じた講座や外部研修を提供し、各々の業務に還元できることを目指している。
経営層や管理職層にもDX研修を実施するなど、全社員にDXの重要性を理解してもらえるよう意識改革を進めている。「DX論文発表会」も全社的に実施している。社長をはじめとする役員が月次で社員からの報告を受けている。
育成活動の一環としてDXポータルサイトを設置した。業務に使えるAIツールや、他部署が取り組んでいる事例、製鉄所での研究開発の結果などをピックアップし紹介している。
企業/組織名 | JFEスチール |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都千代田区(本社) |
課題 | 製品の品質や製造工程での生産性を高めたい |
解決の仕組み | 製鉄所の品質データと操業データを統合し、サイバー空間に仮想製鉄所を構築し、データの分析やシミュレーションにより、製鉄所の操業を改善したり自動化を図ったりする |
推進母体/体制 | JFEスチール、ノルウェーのCognite |
活用しているデータ | 製品の品質データ、製鉄所の操業データなど |
採用している製品/サービス/技術 | 産業向けデータ基盤「Cognite Data Fusion」(ノルウェーのCognite製) |
稼働時期 | 2024年9月(クラウド基盤「J-DNexus」の運用開始時期) |