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ENEOS、競争力の強化に向けたデジタルツイン構築を本格始動
「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo」より、ENEOS 技術計画部の伊藤 裕之 氏
【単独インタビュー】技術計画部 次世代技術グループマネージャーの伊藤 裕之 氏に聞く(聞き手は佐久間 太郎 = DIGITAL X 編集部)
――ENEOSのDX推進における技術計画部の役割は。
製造部門は大きく、製造現場、メンテナンス、技術的サポートの3つの職種に分かれている。技術計画部は、技術的サポートの分野で、技術や設備に対する投資を担当し、製造部門の立場からDXを推進するのが役割だ。
技術計画部の中にも3つのグループがある。10年、20年という中長期的な投資を含めた戦略を立てるグループと、1、2年という足元で現実的な改革を進めるグループ、私が所属するDX推進に関わる次世代技術グループだ。メンバー数は、発足当時の5人ほどが現在は19人になっている。
――データ統合の進ちょく状況は。
Cognite Data Fusion(CDF)の本格的な導入検討は2023年に始まり、2024年度に導入を決めた。導入においては社内のIT部門と連携しながら、Cogniteからの協力を得ながら事前検証を実施した。
私自身は長年、製油所の現場で「トラブルプリベント:Trouble Prevent)」と呼ぶ未然防止に注力して活動してきた。設備が壊れてから生産現場を復帰させるためのトラブルシューティングと異なり、壊れそうな部品を早めに交換したり、装置からあふれそうな原料を事前に減らしたりする取り組みだ。
未然防止などCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)の分野にもデータ統合はインパクトがある。例えば、ガソリンの精製プロセスでは、原油の種類や、混ぜ込む触媒、起こる反応など、さまざまなプロセスデータが運転状態を左右する。プロセスデータと設備データを組み合わせれば、より精度の高い予測保全が可能になると考える。
CDFの導入では、CBMだけでなく、定期点検のようなTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)情報も、すぐに取り出して分析できるようにしたい。
一方で現場の情報を経営層が見たいというニーズも高まっている。例えば本社には、中東で採掘した原油をタンカーに乗せ日本に運んで来るまでの運行状況や装置の状態を見られる仕組みがある。ここに、製油所のオペレーションを中央監視する仕組みを作り、CDFと連携させればダッシュボード化できるのではないかと考えている。
――AI技術は、どう活用していくか。
既に、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を使った生成AI技術の研究や、ロボットの現場実装には取り組んできた。今後は、サイバーとフィジカル(リアル)を通じて設備の信頼性向上と業務効率化につなげられるよう、データ統合・連携を視野に入れた活用を検討していく。
企業/組織名 | ENEOS |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都千代田区(本社) |
課題 | 石油・ガス事業の競争力の強化に向け製油所における設備の信頼性と業務効率を高めたい |
解決の仕組み | 製油所やプラントのデータを統合したデータ基盤を構築し、製油所のデジタルツインを推進することで、自動運転や巡回点検の効率化を図る |
推進母体/体制 | ENEOS、ノルウェーのCognite |
活用しているデータ | 設備図面、保全履歴、運転データ、現場写真と3Dデータなど |
採用している製品/サービス/技術 | 産業向けデータ基盤「Cognite Data Fusion(CDF)」(ノルウェーCognite製) |
稼働時期 | 2024年9月12日(CDFの実導入開始時期) |