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コスモ石油、競争力強化に向けプラントのデジタルツインにより意思決定速度を高める
「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo」より、コスモ石油 工務部の吉井 清英 氏とコスモエネルギーホールディングス IT推進部の八谷 鉄正 氏
コスモ石油は2030年に向けた「Vision 2030」の一環として、石油事業の競争力強化に向けたプラントのデジタル化に取り組んでいる。コスモ石油 工務部の吉井 清英 氏とコスモエネルギーホールディングス IT推進部の八谷 鉄正 氏が「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo」(主催:ノルウェーCogniteの日本法人、2024年9月12日)に登壇し、デジタルプラントのためのデータ統合の現状と今後のロードマップについて説明した。
「コスモ石油は2023年3月、2030年の“ありたい姿”に向けた中長期的ビジョン「Vision 2030」を発表した。その中で石油事業の競争力を強化するためのデジタル化に取り組んでいる」−−。コスモ石油 工務部 保全戦略・APMグループ長の吉井 清英 氏は、こう説明する(写真1)。
2030年に向けて製油所のあり方を見直し、需要や雇用などの変動に備える
コスモ石油は現在、国内3カ所に製油所を置き運営している。Vision 2030に沿う2030年の製油所の“ありたい姿”については、「どうあるべきかを需要動向や雇用環境、社会情勢などから検討した」(吉井氏)という。
まず需要動向では、国内燃料油の需要は2030年に2017年度比で23%減ると予測されている。一方で再生可能エネルギーは急増し、例えばSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の需要は2030年度に2020年度比で330%増加が見込まれるという。
こうした需要動向に対し製油所に求められるコンセプトは、「資産を抑えて財務を軽くするアセットライト(Asset Light)の考え方で、利益を最大化する既存設備を活用し次世代燃料を生産していくこと」だと、コスモエネルギーホールディングス IT推進部 システム開発1グループ長の八谷 鉄正 氏は説明する(写真2)。そのためには「組織横断的に共通目線での投資判断が重要になる」(同)とする。
雇用環境については、生産年齢人口は2030年に2020年比で8%の減少が見込まれる。そのため「人に頼る運営から自立・自走する製油所への変革が求められる。その実現に向けてはデータとAI(人工知能)技術による意思決定がポイントになる」と八谷氏は話す。
加えて、「就活生の約8割が在宅勤務を希望しており、彼らに選ばれる、魅力ある職場環境に変わる必要がある。そのためには在宅での製油所オペレーションの実現がポイントにある」(八谷氏)
社会情勢の観点では、例えば2050年のカーボンニュートラル達成がある。八谷氏は、「そのためにはカーボンニュートラルと省エネ施策をさらに加速させなければならない。そこでは精度が高いシミュレーションによる施策の選別がポイントになる」とする。
そのうえで八谷氏は、「これらの状況や、そのためのポイントを一網打尽にするには統合的な基盤の構築が必要だと判断した」と説明する。だが装置産業にはデジタル化を阻む2つの大きな壁があるともいう。「1つは安全性の観点から現場確認など人の対応が必要なこと、もう1つは事業を支えてきたシステムと設備が古いこと」(同)である。