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ヤマハ発動機、ロボットを“仲間”や“相棒”にし人による作業の価値を高める
執行役員 ソリューション事業本部長 江頭 綾子 氏
工場内の設備や装置間の搬送をAGVや台車ユニットで自動化
装置間搬送の事例1:簡易型自動倉庫による構内物流の効率化
工場や倉庫では、製品の受け取りや保管、ピッキング、出荷などの構内物流業務が発生する。その効率化においては「大型の自動倉庫を導入するほどの規模ではないケースがある」(江頭氏)。そうした際に有効なのが既存レイアウトを活用する簡易自動倉庫である。
具体的にはXYZの3軸の直線軸を持つ直交ロボットを導入し、倉庫の左右両側に配置した棚から物品を取り出せるようにした。地面に接地するX軸には高速かつ静音性に優れたリニア短軸を、Y軸とZ軸には塵や埃の発生を抑えるクリーン仕様の直線軸を、それぞれ搭載する。
電動車いす用ドライブやゴルフカートなどを搬送用に転用
工程間搬送の事例2:内製AGVによる搬送自動化
屋外や段差でも走行できるAGV「COW-el(カエル)」を自社開発し国内外の12工場に導入している。走行ルートをビニールテープで設定・変更できるのが特徴で、カメラで撮影した画像を認識し走行ルートを検出する。
COW-elは、自転車の電動アシスト機能を応用した電動車いす用のドライブユニットを使い内製した(図3)。「自社工場の厳しい環境に対応でき、工程変更の容易さを考慮するため」(江頭氏)だ。市販のAGVは「走行ルートを磁気テープで設定し、磁気計測により走行する。コストがかかるうえ、段差やスロープに弱い」(同)という。
工程間搬送の事例3:台車ユニットによる重量物搬送
同じく電動車いすのアシスト機能を応用して開発したのが、レバー操作で操縦できる台車ユニットだ。「300キログラムの重量物を乗せた台車を力の弱い人でも運搬できる。年齢や性別に関係なく誰もが安全に重量物を搬送できる環境を作るのが目標」(江頭氏)だ。
従来、「重量物の搬送は若手男性社員に限定されがちで、女性やシニア層は配置されにくかった。業務内容によって特定の人材に依存すると人手不足が加速し、多様な人材活用が難しくなる」と江頭氏は指摘する。
工場間搬送の事例:自動運転ゴルフカートによる屋外搬送
自社製のゴルフカートに国産の自動運転技術を組み合わせて屋外搬送用に改良した。2019年に初号機による試験運用を終え、2022年末から事業化している。既に50台以上が稼働するという。
屋外搬送はこれまで、フォークリフトなど人が操作する作業だった。構内の安全走行や屋外の気候、溝や段差、スロープの存在などがあるためだ。AGVによる屋外搬送も多くは「地面に磁器マーカーを埋め込む必要があり、搬送ルートの変動に適さなかった」(江頭氏)
江頭氏は「今後も搬送の自動化を実現するだけでなく、それらをつなげることで、より高度な連携や工場全体の最適化に取り組んでいく。工場の省力化や生産性の向上を通じ、ものづくりに関わる人が、もっと幸せになれる未来に貢献したい」と意気込みを隠さない。