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メガネのJINS、AIチャットサービスで店舗でのCXを高める
ジンズHD AI推進室 常務執行役員の松田 真一郎 氏とジンズ AI推進室 プロダクトマネジャーの黒尾 玲奈 氏
メガネチェーンのJINS(ジンズ)は2025年4月から、店頭でのメガネ選びを支援するAI(人工知能)チャットサービス「JINS AI」の導入を進めている。ジンズ ホールディングスAI推進室 常務執行役員の松田 真一郎 氏とジンズ AI推進室 プロダクトマネジャーの黒尾 玲奈 氏が「AWS Summit Japan 2025」(主催:アマゾン ウェブ サービス ジャパン、2025年6月)に登壇し、JINS AIの開発経緯や成果などを説明した。
「メガネには実に多くの種類がある。それぞれに微妙な違いがあり、自分に似合うメガネを選ぶのは案外難しい。会社全体でAI(人工知能)技術を経営に取り込み、メガネ選びに最高の顧客体験(CX:Customer Experience)を作り上げたい」--。メガネチェーンのジンズ(JINS)ホールディングス(HD)AI推進室 常務執行役員の松田 真一郎 氏は、AI技術に取り組む背景をこう説明する(写真1)。
JINSは「日本で一番イノベーティブなアイウエアブランドでありたい」という理念のもと、これまでもデジタル技術を使ったCX向上に取り組んできた。JINS公式モバイルアプリケーションや、QRコードを使ったセルフ形式の商品受け取りロッカー「PICK UP LOCKER」、オンライン試着サービス「JINS VIRTUAL FIT」などだ。
その延長線上に、松田氏が率いるAI推進室を2024年11月に立ち上げた。当初は「社内公募による3人でスモールスタートした」(松田氏)ものの、ジンズHD CEO(最高経営責任者)の田中 仁 氏が2025年1月に「JINSは2025年を“AI元年”にする」と宣言したことから「AI推進室のチャレンジが加速した」(同)
松田氏は「リソースが限られる中で、JINSが取り組むべき課題を考えた結果、『店頭でのメガネ選びの悩みを解決する』ことを選んだ」と当時を振り返る。
店頭でのフレームとレンズ選びに焦点を当てた機能を提供
そこから誕生したのが、店頭でのメガネ選びを支援するAIチャットサービスの「JINS AI」だ。2025年1月に開発プロジェクトを立ち上げ、2025年4月から一部店舗で提供している。
開発プロジェクトを主導したジンズ AI推進室 プロダクトマネジャーの黒尾 玲奈 氏は「メガネは、EC(電子商取引)サイトよりも実物を見て買いたいという顧客が多いだけに、店頭での最適なフレームとレンズ選びに焦点を当てている」と説明する。
JINS AIが提供する主な機能は(1)類似メガネ検索、(2)フレーム提案、(3)質問サジェストの3つ(図1)。類似メガネ検索では、好みの芸能人の写真やWeb上のメガネ画像から類似商品を検索、フレーム提案では「黒いメガネが欲しい」などの希望を入力しフレームを探す。提案する。「どんな質問をすれば良いか分からない」顧客には質問サジェストで希望を聞き出していく。
チャットでは、生成AIサービス「Amazon Bedrock」(米AWS製)を使って顧客が入力したテキストから意図を判断し、フレーム、レンズ、一般的な質問のどれを聞いているかを判断している(図2)。データ検索サービス「Amazon OpenSearch Service」を使って、ストレージサービス「Amazon S3」(同)上に保管する商品データや接客ノウハウを検索するRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の仕組みも開発した。