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ノーリツ、30億円の原価低減に向け本社工場にBOPとMESを導入

「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2025」より、プロダクツ統括本部 原価管理本部 業務改革推進部 部長の鈴木 亮太 氏

山田 光利
2025年10月21日

ノーリツは2030年に向けた中期経営計画「Vプラン26」で30億円の原価低減を掲げている。同社 プロダクツ統括本部 原価管理本部 業務改革推進部 部長の鈴木 亮太 氏が「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2025」(主催:仏ダッソー・システムズ日本法人、2025年9月9日〜10日)に登壇し、製造現場の見える化によるコストの把握から品質改善までの進捗状況を説明した。

 「ノーリツのものづくりDX(デジタルトランスフォーメーション)活動の出発点は、2021年7月に発足した『DX戦略推進プロジェクト』だ」--。同社 プロダクツ統括本部 原価管理本部 業務改革推進部 部長の鈴木 亮太 氏は、こう話す(写真1)。DX戦略推進プロジェクトは、同社の取締役専務執行役員をプロジェクトオーナーに発足した組織で、鈴木氏は上司と共に事務局を立ち上げ同組織の運営と実務を担ってきた。

写真1:ノーリツ プロダクツ統括本部 原価管理本部 業務改革推進部 部長の鈴木 亮太 氏

経営陣を巻き込み投資に対する合意を形成

 ノーリツは、2030年に向けた中期経営計画「Vプラン26」で30億円の原価低減を掲げている。その実現に向け「データドリブン経営の推進やスマートファクトリーの実現を目指している」(鈴木氏)。具体的には、給湯器を主に生産する明石本社工場(兵庫県明石市)を中心にPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムの最適化や、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の構築などを段階的に進めている(図1)。

図1:ノーリツの「DX戦略推進プロジェクト」のロードマップ

 DX戦略推進プロジェクトの成功に向けて鈴木氏は「特に経営陣の巻き込み方に工夫した」と振り返る。具体的には「プロジェクトの全体像について経営陣の合意を得た後に、個々のシステム導入への投資について改めて経営陣の合意を得る」(鈴木氏)という2段階の手順を踏んだ。「経営陣に当事者意識を持ってプロジェクトに深く関与してほしかった」(同)からだ。

 投資対象としては経営陣には主に(1)データドリブン経営を進化させるための3D CAD(3次元のコンピューターによる設計)モデルの活用とあらゆるデータの可視化、(2)各部門の作業行程を同期化するための3Dモデルを起点としたスマートファクトリー基盤の構築、(3)生産ラインの完全自動化に向けたAI(人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などのデジタル技術の活用の3つを提示した。

 各プロジェクトには、生産本部長と研究開発本部長、資材本部長を責任者に、各部門から部長と室長、主要担当者を構成メンバーとして選任した。経営陣からのトップダウンで始動したプロジェクトながら「PLMの最適化を進めると伝えた際には現場の責任者が『以前から進めるべきだと思っていた』という反応を返してきた。誰もが改革の必要性を感じていたことがプロジェクトを進める上で追い風になった」と鈴木氏は振り返る。

BOPの作成で製造コストのブラックボックス化を解消

 PLMの最適化プロジェクト以前から「ノーリツの製造現場では問題点が整理されていた」(鈴木氏)(1)製品・部品のトレーサビリティ(追跡可能性)が脆弱、(2)製品ごとの材料費が不明確、(3)製品/ライン別の加工費が不明確、(4)生産計画と販売計画の乖離による在庫の非効率の4つである。

 これらの問題点は「製品の製造指示と製造完了は管理できていたが、生産ラインの途中で仕掛っている製品や部品の状態が管理できておらず、ブラックボックス化していることに起因する」と鈴木氏は話す。