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トクヤマ、マザープラントの夜間操業や予兆保全に向け産業用データ基盤を構築
「Cognite Atlas AI Summit in Tokyo 2025」より、徳山製造所 エンジニアリングセンターの森 圭史 氏
9つの製造部へのデータ連携の仕組みを3段階で導入
こうした課題やデータのサイロ化を解消するために導入したのが産業用データ基盤「Cognite Data Fusion(CDF)」(ノルウェーのCognite製)である。
その狙いを森氏は「製造所の、あらゆるデータを一元管理することで、人の経験やノウハウ、マンパワーに頼らず、必要な人が必要な情報を利用・判断する、データ駆動型の業務変革ができる状態にすることだ」と説明する(図1)。
CDFに出合ったのは2022年のこと。第1印象で「CDFを導入すれば、データの収集に費やしていた時間を他の業務に使えるようになる」(森氏)と考えた。そこから1年半をかけて徳山製造所にある全9製造部に導入していった」(同)
CDF上にCognite製の各種アプリーケーションを導入した。トラブルシューティングと運転・保全計画作成用の「Industrial Canvas」と、トレンド・異常検知を可視化する「Charts」、点検記録用の「InField」、AIアシスタントの「Atlas AI」などである。
導入においては「確実に成果を出すため、3つのフェーズに分けて進めた」と森氏は説明する。現在はフェーズ3の段階にある。
フェーズ1 :まず化成品製造部とセメント製造部に導入し、5つのデータソースと連携する。具体的には、時系列のPI(Process Information:プロセス情報)データ、CMMS(Computerized Maintenance Management System:設備保全管理システム)、P&ID(Piping & Instrumentation Diagram:配管計装図)や図面を蓄積しているシステム、ファイル共有システム「SharePoint」(米Microsoft製)の文書、設備画像データである
フェーズ2 :残りの7製造部に導入し、先の5つのデータソースに動機器診断報告システムを加えた合計6つのデータソースと連携する。先行する化成品・セメントの製造部も6つのデータソースと連携する
フェーズ3 :全製造部において、電子操業日誌や財務系システム、検査システム、総合保全システムと連携していく
現在、CDFでは「製造情報は16万アセット、P&IDは3000枚強の情報を連携済み」(森氏)である。2026年度以降は「データソースの追加やロボット連携なども計画している」(同)とする。
サイロ化、点検業務の標準化、操業データ活用を目指す
CDF導入による達成項目は大きく次の3つである。
項目1:データのサイロ化の解消
製造所の設備を示した「トクヤマ版Google Map」を構築し、CDFのデータを直感的に得られるようにする。データが整理整頓され、自然に集まるようにすることで、Atlas AIなども使いて情報収集や資料作成を支援する
項目2:点検業務の標準化
InField上で点検データをデジタル化し、実施スケジュールを管理する。点検業務にかかる時間や点検漏れ・ミスを削減すると共に、パトロール品質の平準化を図る。将来的にはロボットとの連携も視野に入れ、運用のための学習データを自動連携しながら蓄積する

