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コーセー、生成AIの全社展開に向け内製ツールと学習環境の同時展開で現場の意識を変革
「AWS Retail & CPG Expo 2026」より、情報統括部の横山 春佳 氏と金田 実久 氏
定着化に向けダッシュボードとロイヤリティプログラムを追加
現場の評価も高い生成AIツールは、どのように内製したのか。金田氏は「大前提にしたのは『ITリテラシーが低い社員でも迷わず使い続けられる』こと。当初は多機能な仕組みをベースに検討していたが、機能が多すぎるとかえって現場での利用のハードルにつながると判断した。結果、当時はベータ版だったオープンソースの生成AIツール開発環境『Strand Agents』を採用した」と説明する。
Strand Agentsの採用後は、AWSのプロトタイピングチームの支援を受けながら、1カ月で社内トライアルを開始した。コーセーAIの画面としては「現場が迷わず使えるデザインとして必須機能のみを表示し、選びやすいUI(User Interface)になるように設計した」(同)とする。
例えばLLMの選択画面では、モデルの特徴やお薦めの利用用途を表示する。「エージェント機能の特性を生かし、選択されたモデルに合わせてツールのカスタマイズやオンオフをバックエンドで制御することで、思考を止めることなく最適なモデルを選べる動線を作っている」と金田氏は説明する。
プロンプトを書くスキルが不十分な利用者に対しては、汎用的に利用できるテンプレートを用意した。テンプレートを選び、必要な項目を埋めていけば「プロンプトの知識がなくても一定の品質で結果を得られる」(金田氏)という。
そのうえで、システムの利用を定着させるための仕掛けを追加した。1つは、全社の利用状況を可視化するダッシュボード。各部門の会話数や業務削減時間を全社員に公開し「自分の部署の立ち位置が分かるようにしている」(金田氏)
もう1つは継続利用を促すためのロイヤリティプログラムの導入だ。5つのランクを設けて、ランクが高まると利用できる機能が追加されるという特典を用意した。金田氏は「利用者のモチベーションを刺激する仕組みにより、ロイヤリティプログラム導入は生成AIの利用回数が25%ほど増えている」と話す。
内製開発もAI駆動型を採用し利用者ニーズを高速に反映
こうした定着化の仕組みを運用し続けるために「システム構築、ダッシュボードによる可視化、ロイヤリティの向上、利用者の声の活用の4つを高速に回している」と金田氏は強調する(写真3)。具体的には、利用ログを含めた現場の声を受けて、データ項目を追加したりツールの機能を拡張したりしている。
システム構築では、プロジェクトチーム自身がAI技術を使ってプログラムを生成するAI駆動開発に取り組んでいる。「計画から実装、テストまでの全工程にAIを組み込んで開発を進めた」(金田氏)とする。
1カ月の実装の中では課題も見えてきた。設計が不十分なままだと想定外のシステムや不要なリソースを作成してしまう、あるいは回答に揺らぎが生じ品質が安定しないなどだ。
これらの課題に対しては「開発プロセスを計画、実装、テストと明確に段階を分け、各段階での指示内容を完成形として言語化することを徹底した」と金田氏は説明する。「このルールを共有することで品質も安定するようになった」(同)という。
金田氏は「私たちにとってのAI駆動開発とは、人が何を作るかを具体的に言語化し、AIという強力なパートナーと協調しプロダクトを高速に形作っていくことだ。この手法を確立できたことで短期間でのトライアル開始やツールの修正ができた」と手応えを話す。
