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東京電力エナジーパートナー、全18拠点を統合するAIコンタクトセンター基盤をCX向上の起点に

「AWS Summit Japan 2026」より、サービスソリューション事業部 副部長の今野 拓也 氏

森 英信(アンジー)
2026年7月28日

 2024年12月に企画・設計および構築を開始し、2025年9月から12月末にかけて各拠点の切り替えを順次進めた。要件整理からリリースまでを約10カ月、18拠点の切り替えを約3カ月で完了させた。プロジェクトはシステム構築に加えて「ネットワーク環境の整備や端末の調達までを網羅する大規模な取り組みだった」と今野氏は振り返る。

 新基盤は、米AWS(Amazon Web Services)のクラウド型コンタクトセンターサービスである「Amazon Connect」を中核に据え、シンプルなシステム構成を組んだ(図2)。会話録音や通話テキストデータ、各種対応履歴はクラウドストレージ「Amazon S3」(米AWS製)に集約・保管し、応対要約や法令チェック、用件分析には生成AIサービス「Amazon Bedrock」(同)を利用する。

図2:コンタクトセンター新基盤のシステム構成図

 データ可視化ツールには「Amazon Managed Grafana」(米AWS製)と「Amazon QuickSight」(同)を用いる。今野氏は「複数システムを組み合わせる従来の開発ではなく、パッケージ化されたマネージドサービスを組み合わせることで、保守の責任範囲や障害発生時の原因の切り分け、復旧の見通しが立てやすくなった」と説明する。

応対要約から法令チェックまでを生成AI技術で自動化

 今回構築したシステムを、東京電力エナジーパートナーは「SEEDS(Smart Engagement and Efficient Data System)」と名付けた。今野氏は命名の背景を次のように話す。

 「これまではシステムを『作って、入れて、終わり』という発想が強かった。これを改め、いかに自分たちの仕事を楽にし、より良いサービスを提供するためにシステムを最大限に生かしていくか。その考えを育てていく『種』という意味を込めた」

 SEEDSが実現する機能は、現場の応対から管理業務まで全方位に至る。顧客とオペレーターの会話はAI技術を使ってリアルタイムでテキスト化し、音声の聞き直しや録音の確認作業の手間を減らす。

 応対画面には、通話操作用の標準画面としてAmazon ConnectのCCP(Contact Control Panel)を埋め込み、自社の業務に必要な要素だけを配した独自設計とした。「画面の左側に顧客情報、右側に会話の要約を表示し、オペレーターが応対しながら状況を把握しやすい環境にしている」(今野氏)という(図3)。

図3:オペレーターが応対時に使用するCCP(Contact Control Panel)の画面例

 中でも「転送時の情報連携はコンタクトセンターで重要な意味を持つ」と今野氏は強調する。オペレーターを切り替える際に会話の要約データを引き継ぐことで、従来生じていた保留や用件の聞き直しを防止している。要約を生成するAmazon Bedrockの運用では「電力・ガス特有の要件に合わせたプロンプト(指示文)を、実際に応対するオペレーターと『こんな要約の仕方ならどうか』と確認を重ねながら、微調整を繰り返してきた」(今野氏)

 さらに、生成AI技術はコールリーズン(架電理由)の分析や法令チェックも担う。IVRの振り分け先と実際の会話内容が食い違う場合でも「音声テキストから引っ越しや契約変更、料金照会といった本来の用件を分類する」(今野氏)という。「年間数百万本に及ぶ受電内容を正確に把握できれば、拠点ごとの人員配置の精度も高まる」(同)とみる。

 法令チェックでは、一部のサンプリングによる録音確認に頼り、網羅性に課題があった品質確認の運用を改めた。新たな仕組みでは、通話終了後に生成AI技術でテキストを解析し「重要事項を説明できているか」「言ってはならないことを言っていないか」を自動判定する。今野氏は「判定を元に管理者がフォローすることで網羅性を確保している」とする。