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上場したUberに見るプラットフォームビジネスの裏側【第22回】
長く“ユニコーン”として大きく期待されてきた米Uber Technologiesが2019年5月に上場した。時価総額1000憶ドルが予測されていたが初値は、公開価格の45ドルを下回る42ドルだった。初日の終値による時価総額も824億ドルにとどまった。今回は、そのUberの強みと課題からプラットフォームビジネスの成功要因を考えてみたい。
米Uber Technologiesは、MaaS(Mobility as a Service)のリーダーとして、タクシー業界など既存の移動サービスにデスラプション(破壊)を起こしてきた。米国では「30万人以上がマイカーを放棄する」(競合の米Liftの発表)など、社会的にも大きな影響を与えているデジタル企業の代表である。
2009年3月にサンフランシスコで創業したUberは、自身を「TNC(Transportation Network Company)」と定義し、利用者と移動手段を結びつけるテクノロジーとマーケットプレイスからなるプラットフォームを提供している。主力ビジネスのライドシェアサービスは、利用者とUberに参加するドライバー(Uberとドライバーの間に雇用契約はない)を結び、ドライバーが得る収入から手数料を徴収するビジネスモデルである。
以下、プラットフォームビジネスとしてのUberの顧客価値、成長戦略、インフラ、データ活用、収益性に関して見てみたい。
Uberの顧客価値
プラットフォームとして成功するためには、それが効果的に機能し、安心かつ便利に使えることが最低条件である。Uberのライドシェアはスマートフォン用アプリとして、利用者とドライバーを簡単にマッチングでき、支払いも登録したアカウントから自動的に精算される。Uberによれば、車の呼び出しから到着までは平均5分である。
Uberは現在、63カ国700都市以上で事業展開している。世界中の多くの都市で、単一インタフェースを介して、すぐに移動手段を確保でき、支払いも簡単という価値を提供する。ドライバーと利用者を相互に評価する仕組みにより、安心して使えるための工夫もある。
これらのメリットにより利用者を増やしている。2018年末のアクティブユーザー数は9100万人に達し、前年比で2300万人増加した。使用頻度も増えており、2018年の総利用回数は前年比40%増の52億2200万回だった。
ユーザーインタフェースとプラットフォームビジネスをベースにした、安心・安全で利便性の高いマッチングプラットフォームがUberの提供する顧客価値である。
Uberの成長戦略
プラットフォームの成長戦略としては、図1のような方法が考えられる。資金力もあるUberは、すべての分野の戦略を推進している。
既存ビジネスの利用者数や頻度の増加
Uberは、マーケティング活動やグローバル展開によって、ライドシェアの成長を図るだけでなく、より広い顧客の要求を満たせるようにサービスを広げている。
たとえば、目的地が近かったり方向が同じだったりする人たちが相乗りする「Uber Pool」と呼ぶサービスや、相乗りする車がいる場所まで利用者が歩いていく「Express Pool」と呼ぶサービスがある。個人のプライベートな利用から始まったライドシェアを、より安い値段で活用できるようにしたものだ。
顧客の好みによって高級車を選択できるなどオプションによる付加価値も提供している。B2B(企業間)の分野に向けても、出張などビジネス用Uberの展開を図っている。
顧客価値の水平展開による新ビジネス
ライドシェアで実現した顧客価値は、他の移動手段や乗り物に応用している。その中には、米Limeと協業した電動バイクや電動スクータのサービス、観光地でのヘリコプターによるシティツアーを提供する「Uber Chopper」などがある。電動垂直離着陸機を空飛ぶタクシーとしてサービスする「Uber Air」は2023年のサービス開始を目指している。
これらの移動手段の提供は、新ビジネスとして利用者の獲得をするだけでなく、既存の利用者の選択肢や利便性を高め、プラットフォームの価値を高める。
プラットフォームの水平展開による新ビジネス
Uberの強みとして、マッチングのアルゴリズムや、需要予測をベースに距離や時間、交通量、などを考慮した配車アルゴリズムなどがある。これらを活用した新ビジネスの展開を進めている。
食事配達の「Uber Eats」では、利用者とレストラン、配達車をマッチングすることで、お気に入りのレストランの食事や食べたいメニューを利用者に届けている。「Uber Freight」では、トラックドライバーと、荷物の輸送を依頼したい業者をマッチングする。条件の確認や交渉が簡単にできるよう工夫されている。
プラットフォームの他社サービスへの提供
他社のサービスから呼び出せるようにUberはAPI(Application Programming Interface)を提供している。API経由でビジネスが成立した時はバックマージンが支払われる。