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デバイスのIoTが新たなビジネスチャンスを生み出す【第27回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2019年11月18日

IoTがもたらす機能を十分に理解する

 このようなIoT市場の広がりに向けて、IoTの活用や製品を企画する際には、IoT活用ソリューションの価値を考えなければならない。価値を考えるうえでは、IoTによって提供される機能を理解しておく必要がある。成長分野の各種事例に組み込まれているIoTがもたらす機能を、今一度おさらいしておこう(図1)。

図1:IoTがもたらす機能

現象の見える化

 センサーやカメラを配置することで、稼働中の機器や、飛行中のエンジン、離れた場所など、これまでは難しかったさまざまな状況がリアルタイムに把握できるようになる。消費者の動線や、調査・アンケートなどで収集していた結果も、データの収集によって見える化できる。

 現状を把握することによって、問題の発見や問題に対する迅速な対応が可能になる。集積されたデータからは新しい現象を発見できるようになる。

原因の見える化

 現象の見える化によって収集されたデータを分析し、現象と原因の関係を明らかにできれば、問題が起きたときの原因発見が容易になり、迅速な問題解決が可能になる。複雑な事象でも、それぞれの部分と、それらの関係を分析しモデル化できれば対処できる。その分析結果は、改善や新規製品の企画に反映することも可能になる。

予測

 現象と原因の関係モデルを使ったシミュレーションが可能になる。現象や想定から発生する事象を予測し、あらかじめ問題がありそうな場合の準備や、シミュレーションに基づいた最適な実施ができる。予兆診断やアクションのリコメンデーションも可能になる。

制御

 離れた場所から、画像やセンサーによって状況がリアルタイムに把握できれば、現場の機器などを離れたところからコントロールできる。スマートスピーカであれは、手が使えないときに音声で指示できる。

自動化

 現状の把握と、それに対するアクション、さらに予測に基づいた準備ができれば、インテリジェンスを持った自動化や自律対応の実現に進める。

テクノロジーが今までできなかったことを可能に

 上述したように、IoTの機能が生み出す価値は一般的に、現象から原因の見える化、自動化・自律対応化へと進化させることで高まっていく。コスト削減や、資産や人の生産性の向上、品質やスピードの向上といったビジネス価値を実現することが重要だ。製品/サービスにおいては、IoTによって新しいエクスペリエンスを提供し差別化を図っていく方法もある。

 これらのことを念頭に置いて、市場動向を把握し、テクノロジーとビジネス改善の両面から可能なことを考え、それをベースにIoTの適用を考える必要がある。ビジネス価値を実現するためには、ビジネスモデルの変革も検討しなければならない。

 2019年10月に千葉・幕張で開かれた「CEATEC 2019」では、2030年の街を想定したIoTの展示や、それぞれの会社の取り組みが「Society5.0 Town」として発表されていた。テクノロジーの進化によって、今までできなかったことが可能になっていく。従来の事業の枠を超えた大きなビジネスチャンスが訪れようとしている。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。