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広がるxR(VR/AR/MR/SR)のビジネスチャンス【第40回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年1月18日

コロナ禍のテレワークやステイホームによってオンラインの活用が進んでいる。オンライン化によって活用が広がるデジタルテクノロジーの1つがxR(VR=Virtual Reality:仮想現実、AR=Augmented Reality:拡張現実、MR=Mixed Reality:複合現実、SR=Substitutional Reality:代替現実)だ。この動きは、5G(第5世代移動体通信)によるxR機器の進化によりさらに加速していく。今回はxRの動向と応用について考えてみたい。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、テレワークやオンライン会議などを利用するシーンが増えている。Web会議ツール「Zoom」を提供する米Zoom Video Communicationの業績は2020年5〜7月期と同8〜10月期において、それぞれ前年度比335%、同367%増と急成長した。

デジタルスペースを“現実”として知覚させる

 オンライン化によって活用が広がったもう1つのデジタルテクノロジーに「xR」がある。xRは、コンピューターによって作り出されたデジタルスペースを“現実”として知覚させる技術だ。現実では難しかったり不可能だったりする体験を得たり、時間や空間を超えた体験ができたりする。

 xRは、VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)、SR(Substitutional Reality:代替現実)の総称である。

 VRは、「HMD(Head Mount Display)」と呼ばれるゴーグルのような機器を頭部に装着し、コンピューターが合成した映像や音響から作り出される3次元空間を通して仮想的な体験を可能にする技術である。

 ARは、カメラやマイク、GPS(全地球測位システム)や各種のセンサーなどで得た場所や周囲の状況に関する情報を元に、現実の画像や映像、音声などをコンピューターによって加工・追加・削除して利用者に提供する技術だ。

 MRは、現実空間と仮想空間を融合し、現実と仮想のモノや環境がリアルタイムで影響しあう環境を構築する技術である。そしてSRは、現実世界と過去に、その場所で起きた出来事を重ねて経験するための技術だ。

 xRの活用が最も進んでいるのはゲームの分野である。その用途は図1のように幅広い。シューティングやスポーツのほか、現実世界のシミュレーションによる仮想体験、3D(3次元)を使った新しい表現などだ。

図1:xRのゲーム分野での活用例

 コロナ禍のステイホームを背景に、xRは家庭におけるエンタテインメントとしてのゲームやオンライン体験から、3D(3次元)を使ったリモートワークなどへと広がっている。その広がりがさらに、新しいUX(User Experience:顧客体験)やサービス、ビジネスにつながっている。

 今後は、テクノロジーの進化と相まって、さらに幅広い分野での応用が予想される。そうしたテクノロジーの参考例が、米Magic Leapが開発するxRアプリケーションに見られる。

 2010年の設立のMagic Leapは、米Googleなどの投資によってユニコーンになったxRのリーディング企業だ。「空間コンピューター」の実現を目的に、HMDやコンピューターを小型にしウェアラブル化を図ることで、xRを様々に応用している。

 Magic Leapが手掛けるアプリケーションの例を図2に挙げる。新しい表現や仮想体験によって、ニュースや演劇、音楽、教育、ショッピングなど、様々な分野での新しい試みを見ることができる。仮想体験やデータを新しい形で視覚化する方法は、幅広い分野に変化をもたらす可能性がある。

図2:米Magic Leapが手掛けるアプリケーションの例