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リターン上げるAI技術活用の加速が規制強化も生む【第46回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年7月19日

リターンを得られる活用例が増加中

 実際の企業でのAI技術の活用実態を、米PwCが発表している調査結果『2021年AI予測(日本)』から見てみたい。同調査は、米国では2020年10月に1032人の企業幹部に、日本では2020年12月に売上高500億円以上のAI技術を導入済み、または導入検討中の企業の部長職以上に対して実施されている。

 この調査によると、コロナ禍でAI技術活用の取り組みが加速した企業は、米国では52%、日本では32%だった。AI技術活用の加速化は米国において顕著である。一部の業務にAI技術を導入している企業は、日本で27%(前年度は22%)、米国が33%に達する。

 さらに全社的に広範囲の業務にAI技術を導入している企業も、日本では16%(同5%)、米国では25%だった。このように、一部の業務に試験的にAI技術を活用する段階から、全社的に広範囲にAI技術を活用していく段階が始まっている。

 AI技術活用の成果も上がっている。現時点でAI投資から得ているリターンについて、多くの企業が「成果を得ている」と回答する。米国でのリターンのトップ5は表2のとおりだ。すでに50%以上の企業がリターンを生んでいる。

表2:米国企業がAI技術活用で得ているリターンのトップ5(『2021年AI予測(日本)』、米PwCより作成)
リターンの内容回答比率
より良い顧客体験の創出67%
社内の意思決定の改善54%
製品とサービスの改革53%
より効率的な業務運営と生産性の向上52%
コスト削減の実現50%

 一方、表3は、日本でのリターンのトップ5である。まだリターンにつながっている割合は少ない。分野も日米で差が見られる。米国ではディスラプションにつながる主要な業務において成果を出しているのに比べ日本では、改善的な部分でのリターンしか実現できていない。

表3:日本企業がAI技術活用で得ているリターンのトップ5(『2021年AI予測(日本)』、米PwCより作成)
リターンの内容回答比率
より効率的な業務運営と生産性の向上30%
製品とサービスの改革24%
コスト削減の実現23%
リスク削減22%
より良い顧客体験の創出19%

 今後は、新しいCXや製品/サービスの開発分野、および意思決定などの経営プロセス改革分野におけるAI技術の活用がチャレンジになる。両分野での活用が進みリターンにつながってくれば、AI技術活用は一層に加速するはずだ。

 他にもリターンを生んでいる分野としては、リスク低減、売上高の増加、従業員のトレーニングとスキルアップ強化、人材の採用と定着の強化が挙がる。日本企業においてもAI技術活用を検討すべき分野である。