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“as a Service”による新ビジネスの立ち上げを生成AIが加速【第71回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2023年8月21日

クラウドや製品のサービス化に伴って“aaS(as a Service:サービスとしての提供)”の活用が広がっている。さらに生成AI(人工知能)が登場したことで、さまざまなサービスのaaS化が加速される様子も見られる。今回は、aaSの中でも、クラウドによるaaSと製品のサービス化によるaaSについて考えてみたい。

 情報技術の活用は、“aaS(as a Service:サービスとしての提供)”化により“持つ世界”から“使う世界”へと変貌した。aaSにより、さまざまなハードウェアやソフトウェアをサービスとしてネットワーク経由で利用できる。高価なハードウェアや、最新のツールやテクノロジーもすぐに使える。

 クラウドサービスの市場規模は、2022年に200億米ドルと推定される(米Synergy Research Group調べ)。2023年から2032年までは10%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2032年までに700億米ドルを突破すると予測されている。2023年第1四半期の市場シェアは、AWS(Amazon Web Services)が32%、Microsoft Azureが23%、GCP(Google Cloud Platform)が10%で、これらトップ3だけで市場の65%を占める。

 クラウドのaaSは、その種類を広げている。当初は、サーバーやストレージの機能を提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」から始まり、開発環境を提供する「PaaS(Platform as a Service)」、アプリケーション自身を提供するSaaS(Software as a Service)へと対象領域が広がった。ただ一部アプリケーションはIaaS以前からASP(Application Service Provider)サービスとして提供されてもいた。

 開発環境としては、コンテナ関連の開発を支援する「K8s-aaS(Kubernetes as a Service)」や「CaaS(Containers as a Service)」、サーバーレス環境を提供する「FaaS(Function as a Service)」、プログラミングレスの開発を支援する「NoCode」など、最新の開発手法もクラウド経由のサービスとして提供されている。

 その他、データベースの「DBaaS:Data Base as a Service」」やセキュリティの「SECaaS(Security as a Serivice)」、仮想デスクトップサービスの「DaaS(Desktop as a Service)」や災・障害復旧のための「DRaaS(Disaster Recovery as a Service)といった各種サービスも提供されている。

 最新のICT(情報通信技術)環境を提供するaaSも広がっている。最新テクノロジーを、ツールや設備、専門人材への先行投資を最小限に抑えながら、使ってみたり試用・検証したりができる。それらが実際のビジネス展開に発展した際は急速な規模の拡大にも対応できる。生成AIもaaSサービスとして提供されており、そのユーザー数の急拡大にはクラウドが貢献している。

 クラウドのaaSには次のようなメリットがある(図1)。

図1:クラウドの“aaS(as a Service)”のメリット

メリット1=コストや管理工数の削減 :必要な機能だけ使える。定額制や従量制課金制になっていることも多く、初期コストや運用コストなどが不要あるいは抑えられる

メリット2=aaSによるビジネス変革 :aaSの活用により、進んだ仕組みの導入やビジネスモデルの実現が可能になり、自社のプロセスや仕組みを変革できる

メリット3=迅速な活用 :ハードウェアの購入、システムの開発なしに使え、ビジネスの加速を実現する。ビジネスのスケーリングにも対応できる。ネットワークにアクセスできれば、必要な機能を、必要な時に、どこからでも使える。複数メンバー間の共有も可能になる

メリット4=人材活用の最適化 :必要な機能を使うためのハードウェアの導入や、システムの開発・運用・保守などのための人員が不要なため、人員の最適化が図れる

メリット5=新技術や高価な機械の活用 :AI、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)といったXR(クロスリアリティ)、ブロックチェーン、ロボティックス、量子コンピューティングなどの最新技術を試したり、それらのテクノロジーを使ったビジネス展開を図ったりができる

 このように自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)やビジネス変革に役立つaaSを使うことは、ビジネスの迅速性を高め、新しいビジネスへのチャレンジを支援する。