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変革の部分最適を防ぐ“舵取り役”こそがCDO

加茂 純(CDO Club JAPAN代表)
2017年10月2日

 その一環としてCDO Club JAPANでは現在、「CDO Workshop」と「CDO Summit Tokyo」を展開しすると共に、CDO関連情報をサイトで提供しています。

 CDO Workshopは、クローズトな招待制のワークショップです(写真2)。1〜2カ月に1回程度、CDOの方々に参加いただき、CDOにとって必要な技術や戦術面の技能や知識を交換・共有しています。2017年8月までに3回開催し、第4回を2017年11月に開く予定です。

写真2:招待制の「CDO Workshop」の様子

 ワークショップの参加者は、CDOあるいは、役職こそCDOではなくても、それぞれの企業でデジタルトランスフォーメーションに責任を持つ執行役)の方々です。業種も、化粧品や、航空、飲料、銀行、損保、自動車、化学、通信など多業種にわたります。ケーススタディに基づく討議では“CDO同志”という目的意識が共有された鋭い討論が繰り広げられ、新たなネットワークが構築されつつあります。

3社のCDOらが登壇した「CDO Summit Tokyo 2017」

 一方のCDO Summit Tokyoは、より多くの方に、日本の競争力アップのため必要不可欠なCDOというリーダーの必要性を知っていただくための“場”として開催しています。第1回の「CDO Summit Tokyo 2017」は東京・千代田区で2017年7月14日に開催しました。「デジタルトランスフォーメーションを成功させるリーダー達」をメインテーマに、キーノートや企業事例、パネルディスカッションなどを実施しました。

 キーノートスピーチは、CDO Club Japanの特別顧問であり一橋大学院の神岡 太郎 教授が講演。次いでCDO Clubの創設者でありCEO(Chief Exextive Office:最高経営責任者)を務めるDavid Mathison氏が登壇し『CEOになったCDOたち』と題して講演しました。「2011年の調査開始からこれまでにCDOからCEOになった人が100人を超えており、CDOがCEOへのキャリアパスの最短ルートだ」(Mathison氏)ということです。

 企業の事例としては、日本ロレアル、三菱ケミカルホールディンスの両CDOと三菱東京UFJ銀行(MUFJ)のデジタルトランスフォーメーションにおけるプリンシパルアナリストが登壇しました。日本ロレアルのCDO兼エグゼクティブコミッティーメンバーである長瀬 次英 氏は「CDOの役割と求められている人材」について、三菱ケミカルホールディングスのCDOである岩野 和生 氏は「三菱ケミカルホールディングスにおけるCDOの掲げるビジョンと役割、そして今後の展望」と題して、それぞれ自社での取り組みを紹介されました。

 MUFJのプリンシパルアナリストである柴田 誠 氏は「MUFGにおけるデジタルトランスフォーメーション」と題し、FinTechによる金融業界における大きな変化や、MUFJが新たに置いた「CDTO (Chief Digital Transformation Officer)」の役割や責任、デジタル部門全体の動向について講演されました。

 ほかにも、ゲストスピーカーとして、林 芳正参議院議員(8月に文部科学大臣に任命)が「行政におけるデジタル化の必要性」を講演。PwCコンサルティングからはパートナーである松永エリック匡史 氏が「デジタルトランスフォーメーションのトレンド」を、Strategy&のパートナーを務める唐木 明子 氏が「CDOについての調査」をそれぞれ発表されました。残念ながら日本の取り組みは世界の後塵を拝しているのが実状のようです。

 次の「CDO Summit Tokyo 2018」は2018年1月26日に、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで開催します。海外企業のCDOによる事例紹介や、日本企業のCDOによる事例紹介、CDOによる対談や「Japan CDO of the Year」のノミネートなどを予定しています。本連載ともども、どうぞ、ご期待ください。

加茂 純(かも・じゅん)

CDO Club JAPAN代表。東京大学理学部情報科学科卒、米イリノイ大学大学院アーバナシャンペーン校コンピュータサイエンス学科AI専攻修士。電通に入社し、インテル、マイクロソフト、アップルコンピュータ(当時)の日本進出と事業拡大戦略を担当し「インテル入ってる」「Intel Inside」グローバルキャンペーン戦略を成功させる。

電通退社後はセコイアキャピタルにて、Googleを生み出したマイケル・モリッツ氏、LinkedInを生み出したマーク・クワミ氏、Facebookを生み出したマーク・アンドリーセン氏らから投資を受け、シリコンバレーで米Harmonic Communicationsを創業し、アジアパシフィック地域統括担当副社長、日本支社長に就く。PwCコンサルティング 戦略部門ディレクターに就任後、マーケティングエクセレンスグループを創設し代表になる。

立教大学ビジネススクール兼任講師(マーケティング、ブランド戦略、CSR)、CMOワールドワイドの設立者兼代表取締役。著書に『CMOマーケティング最高責任者』『刺さる広告』『企業の遺伝子は進化する』『インドビジネスのルール』『P&G 伝説のGMOが教えてくれたマーケティングに大切なこと』など多数ある。