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日本でもCDOを設置する自治体が登場、日本版ガバメントDXが動き出す【第24回】

水上 晃(CDO Club Japan理事・事務総長)
2019年10月18日

2019年6月、神奈川県が「CDO(最高データ統括責任者)」の設置を発表した。社会課題の解決や高頻度で発生する災害などへの対応を含め、社会生活を支えるうえでの自治体の役割は今後、ますます大きくなっていくと予想される。そうした動きに呼応して「CivicTech」や「PubliTech」と呼ばれる自治体業務を対象にしたデジタルテクノロジーの成長が期待されている。

 神奈川県は2019年6月1日付けの人事異動で、「ICT・データ戦略課」を設置するとともに、同県初のCDO(最高データ統括責任者)を設置し、副知事の首藤 健治 氏が就任した。県民の安全・安心や利便性の向上を図る「くらしの情報化」を進めるために「共生社会推進課」「未来創生課」という2つの組織も新設し、社会的課題の解決と新しい価値創造という2つのアプローチにおいてデータを中心に取り組んで行く。

 自治体の活性化に向けて、デジタル変革を目指動きは各地に広がりつつある。「Impress DX Awards 2018」(主催:インプレス)の総合グランプリを受賞した広島県は、県内膳エリアを実証実験場所に提供し、地方の課題解決に総合的に取り組んでいる。

 福岡市では「福岡100」と題したプロジェクトを立ち上げ、人生100年時代を見据え「ひと」と「まち」のいずれもが幸せになれる社会の実現を目指す。「ICTを活用した遠隔医療」や「健康や見守り」といった取り組みを始めている。こうした動きは今後、多くの自治体で動き出すと予想される。

海外はガバメント領域で多くのCDOが活躍

 デジタル化で先行する海外の自治体においては、広島県や福岡市のような取り組みの企画・推進役をCDO(最高デジタル責任者/最高データ責任者)が担っているケースが多い。

 たとえば米NY市は2011年1月、初代CDO(最高デジタル責任者)に当時27歳だったRachel Haot氏を登用。同氏は、市が発信する情報のソーシャル化やデジタコミュニケーションに向けた取り組みの舵取り、あるいはDigital City Road Mapの作成などで活躍した。

 シカゴ市は、全米でも特にオープンデータの取り組みを進めている。同市Webサイトには600以上のデータセットが公開されている。2001年から報告されている市内の全犯罪記録のほか、水質データ、行政総合窓口への通話データ、免許関連データ、許可証関連データなど多岐に渡る。

 同市のCDO(最高データ責任者)であるTom Schenk氏は、オープンデータの活用を推進し、データのオープン化が新たなビジネスの創出にもつながっていくエコシステムの整備も推進している。

 カナダのオンタリオ州初のCDOだったHillary Hartley氏は、省庁横断プロジェクトを多数企画し推進してきた。同氏は「オンタリオ州の1400万人の人々とビジネスに対し、政府のオンラインサービスをよりシンプルに、より早く、より良いものにすることがミッションだ」と語っている。

 スウェーデンでは首相のStefan Löfven氏が2018年、国家CDOを設置するとの声明を出している。これらは一部の特別な事例ではない。世界全体で国家運営にデジタルが不可欠なことが明白になってきている。