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CDOの多様なキャリアに垣間見えたアナログ力の重要性、CDO Summit NYC 2019より【第22回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事、海外事業局長、広報官)
2019年7月1日

CDO Club Globalは2019年5月8日(現地時間)、米ニューヨークにおいて「CDO Summit NYC」を開催した。米国企業や行政組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードしデジタル戦略を担う人々、約150人が一堂に会した。そこに集まったCDO(Chief Digital/Data Officer:最高デジタル/データ責任者)は実に多様なキャリアを持っている。

 「CDO Summit NY」は、CDO Club Globalが各国で開くSummitの中でも最初に開催されたSummitで、2019年は7度目の開催になる。キーノートスピーチやパネルディスカッションのほか、「CDO of the Year 2019」の表彰式やレセプションパーティなどが催された(写真1)。

写真1:CDO NYC サミットの様子

 本Summitに集う人々の肩書き(タイトル)は多様である。CDOは当然ながら、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)やCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)などだ。

デジタル分野のスペシャリティが異業種への転職を可能に

 CDO Clubは毎年、目覚ましい活躍をしたCDOを都市毎に「CDO of the Year」として選出している。今回のCDO Summit NYで「U.S. Chief Digital Officer of the Year 2019」を受賞したのは米MGMリゾーツ・インターナショナルの会長(President)を務めるAtif Rafiq氏である。

 Rafiq氏は、米ゴールドマンサックスの財務アナリストとしてキャリアをスタートさせた。スタートアップ設立を経て、米Yahoo!のグローバル製品マーケティング/戦略責任者から、ローカルビジネスの責任者になった。

 そこから米Amazon.comで、電子書籍端末「Kindle」のダイレクトパブリッシングのゼネラルマネジャーになり、2013年には米マクドナルドのCDOおよびSenior Vice President(上級副社長)に就いた。さらに2017年にはボルボ・カーズに移りCDOおよびグローバルCIOを務め、MGMに至っている。

 米国では転職が一般的だとはいえ、Rafiq氏は自らのスペシャリティを着実に磨きながら異なる業界に飛び込んでいる。こうした傾向は、デジタル化の波により業界の垣根がなくなりつつことで、加速されているようにみえる。

 Rafiq氏の場合、Webサービスからハンバーガー店、自動車メーカー、カジノリゾートなど業種は異なるものの、eコマースやモバイルアプリケーション、プラットフォームというデジタルの文脈においては、具体的なサービス内容は変わっても、各組織における自身のミッションと進め方は変わっていないのかもしれない。

 一貫してB2C(企業対個人)の企業で経験を積んできたという強みも、あるのだろうが、転職し一定期間を過ごせば、その企業が抱える課題や着手すべき優先順位、最適な連携先などが見極められ、独自のフレームワークによって課題解決が図れるということだ。結果、収入も増えていく。

 データサイエンスの領域で、企業と大学の間で“二足の草鞋”を履くCDOもいる。Dr. Chris Wiggins氏だ(写真2)。米コロンビア大学の応用数学の准教授であると同時に、米ニューヨークタイムズのChief Data Scientistでもある。同氏によれば、「産業と学術の両方で活躍する人が双方にいい影響をもたらしている。こうした働き方はデータサイエンス領域において徐々に一般的になりつつある」と話す。

写真2:コロンビア大とニューヨークタイムズの“二足の草鞋”を履くDr. Chris Wiggins氏