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デジタルを駆使するCDOにこそ強い"人間力"が必要【第6回】
CDO Club Japanは2018年1月26日、アジア地域で初の「CDO(Chief Digital/Data Officer)Summit Tokyo 2018」を開催した。前回に続き、同サミットでのパネルディスカッションの様子と、そこから得られた示唆を紹介したい。
「CDO Summit Tokyo 2018」のパネルディスカッションに登壇したCDO (Chief Digital Office:最高デジタル責任者)は、日本ロレアルCDOの長瀬次英氏、三菱ケミカルホールディングス執行役員CDOの岩野和生氏、SOMPOホールディングス グループCDO常務執行役員の楢﨑浩一氏の3人。
そこに、名刺管理サービスを手がけるSansanのデジタル戦略統括室室長である柿崎充氏、と、ビッグデータ分析を手がけるトレジャーデータのマーケティング担当ディレクターである堀内健后氏が加わった。モデレーターは、一橋大学商学研究科教授の神岡太郎氏が務めた。
CDOはAIで武装したロボットではない
最初のテーマは「CDOには、どのような人が向いているのか?」。楢﨑氏は、ヘッドハンティングによってCDOに就いた経験から、次のように話す。
「ほとんどの人が『CDO』という肩書を聞いたことがなく、恐らく、ロボットのようで、AI(人工知能)で武装した人といったイメージだったのではないか。だからこそ余計に"人間力"で勝負した。人間臭く、いいやつだと思われない限り組織に入り込めず協力も得られない。結果としてミッションも達成できない」
岩野氏も「CDOには人間味が重要である」ことを強調。そのうえで「粘り強く、様々な立場の人の話を聞くことから始めていけば、次第にチームメンバーの対応が変わってくる」と話す。長瀬氏は、「CDOといえば『AIを導入する』『コールセンターをAI化する』といったイメージが強い。だが単にテクノロジーに走るのではなく、目指すビジョンやブランド戦略に合わせ、本質をとらえベストな取り組みを柔軟に判断することこそがCDOの役割だ」と強調した。
CDO自身からのコメントに対し、デジタル化のけん引役を担う人々と仕事をする機会が多い堀内氏は、「CDOは様々なデジタルツールを駆使して消費者の行動を読み解いている。その背景には、本質的には『近づきたい』『理解したい』『愛されたい』といった人間的な目的があるからだろう」との見方を示した。
デジタル技術を駆使して組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するCDOは、いい意味で第一印象を裏切る人間味にあふれた人物である必要がありそうだ。デジタルの時代だからこそ、人間力が求められる。横串で部署や業界をつなぐ"触媒"としての高度なコミュニケーション力と、顧客接点を多く持ち、データや数字に表れない消費者の心理や行動の背景をとらえる力がCDOには重要なのだろう。