• Column
  • CDO CLUB発 世界のCDOは何を考え、どう行動しているのか

スマートシティに向け増える行政CDO、スウェーデンは史上初の国家CDOを任命【第7回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事 兼 チーフコミュニケーションオフィサー)
2018年4月2日

CDO(Chief Digital/Data Officer:最高デジタル/データ責任者)を設置する動きが海外では、企業だけでなく省庁や自治体など行政組織に急速に広がっている。なぜ海外では行政の現場にCDOが求められているのだろうか。その理由はスマートシティに向けた取り組みが本格化しているからだ。海外で活躍するCDOと、彼らが目指す方向性を紹介する。

 2018年2月、スウェーデンが国のCDO(Chief Digital Officer)としてÅsa Zetterberg氏を任命したことが話題になった。国家行政においてCDOを置いたのは、これが世界で初めて。首相であるStefan Löfven氏から任命された彼女が今後、スウェーデンのデジタル戦略を牽引していくことになる。

 スウェーデンは2017年に、デジタル戦略を策定し5つの主要テーマを掲げた。インフラ整備や全国民がデジタルテクノロジーに関する幅広い情報にアクセスできるような環境作りなどのほか、ネット上のヘイトスピーチや、急速に脅威が高まっているサイバー攻撃などの課題にも対策を講じていく。

 Zetterberg氏は前職でも、市議会や州議会などの行政機関においてデジタルイニシアチブをリードしてきた。デジタルサービスセンターを設立し、シニア層や移民に対し学ぶ機会をデジタルテクノロジーによって提供するなど、デジタル化に大きく貢献している。

 国のCDOに就任するに当たり同氏は、自身の仕事を「言葉を行動に移していくこと」と表現した。スウェーデンをよりサステイナブルでデジタル化された国家にするために、デジタル領域において何が起きているのかを明確にし、今、取り組むべきことに光を当てていく。

市や州、省庁のためのCDOも活躍

 市のCDOとして活躍した人物として知られるのがStern Haot氏である。2011年1月から2013年10月まで米ニューヨーク市において、当時のMichael Bloomberg市長の下でCDOを務め、同市初の「都市デジタルロードマップ」を策定した。このロードッマップに記載された目的は2013年10月までに、ほぼ100%達成されている。

 その実績が認められ、Haot氏はその後、Andrew M. Cuomo氏がニューヨーク州の知事だった際に、同州のCDOとして州のWebサイトを整備し、州が掲げるビジョンやサービスに関する情報をより分かりやすく提供したり、州内のテクノロジー企業と連携しオープンイノベーションが起きるように働きかけたりした。

 英国では、省庁ごとにCDOを設置している。2017年から英教育省のCDOを務めているMark O'neill氏が、その1人(写真1)。現在は、教育全般に関わる新しいサービスをアジャイル手法を採り入れた開発に取り組んでいる。

写真1:英国教育省のCDOであるMark O'neill氏

 O'neill氏はそれまで、デジタル・文化・メディア・スポーツ省に6年、コミュニティ・地方自治省にて1年、それぞれのCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を務めてきた。キャメロン政権時には、政府に対するアクセラレーターであるSkunkworksを世界初で立ち上げた。

 その後、内閣府に設置されたGDS(Government Digital Service:政府デジタルチーム)においてInnovation and Delivery部門の代表を務めた。GDSは、国民のニーズに対応するために、部門横断でデジタルイノベーションを推進するための組織である。2012年のロンドンオリンピックにおいては、CIOに準ずる役割でプログラム開発や整備に携わってもいる。