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日本でもCDOを設置する自治体が登場、日本版ガバメントDXが動き出す【第24回】

水上 晃(CDO Club Japan理事・事務総長)
2019年10月18日

自治体のデジタル変革を支えるシビックテック

 政府や自治体においてデジタルが注目され、CDOが設置される背景には、要介護者の増加や人口減少などの社会的課題の顕在化に対し、デジタル技術の活用が改革の一手になり得るとの大きな期待がある。市民生活の向上だけでなく、自治体運営の高度化も対象である。

 こうした取り組みは、「ガバメントDX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれ、そのためのテクノロジーは「CivicTech(シビックテック)」という造語で表現されている。2009年には、地方自治体の仕事の改善に取り組むCode for Americaが設立されている。Code for Americaに資金提供するナイト財団はシビックテックを次のように分類している

・Government Data(オープンデータの利活用)
・Collaborative Consumption(P2Pシェア)
・Crowd Funding(クラウドファンディング)
・Social Net Works(ローカルSNS)
・Community Organizing(コミュニティエンゲージメント)

 ガバメントDX/シビックテックによってもたらされる効果としては、以下が想定される

・行政・公共サービスの利便性の向上
・市民の地域社会への参加の促進
・行政の透明性や説明責任の向上
・データ活用によって生まれる新たなビジネス

 上記の中でも特にデータ活用分野は“ローカル”での“住民の利便性”のためのデータの提供と利用という発想に基づいている(図1)。昨今、データ活用に制限を設けようとする傾向を生み出したGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)のようなグローバルプレーヤーへのデータ集中環境とは全く逆のアプローチだ。

図1:ガバメントDXによってもたらされる効果

 透明性や信頼性を価値として提供できる自治体が活動の中心になる形式は、データ利用に比較的保守的な日本の市場には適合しやすいと考えらえる。

課題先進国・日本のチャレンジは世界が注目

 日本の自治体でのCDOの出現と活躍は、社会課題が今後、多数顕在化すると予想される日本の自治体運営の改革に大きな可能性が期待できる。特に日本は今後、高齢化が進み、自治体は運営の効率化を目指しながらも住民サービスを高度化するための施策を提供していく必要があるが、従来の発想の延長では抜本的な解決が難しくなることが予想される。

 一方で、自治体の規模が小さい地方においてはデジタル人材の登用が難しいなど、人的な面による実現性について大きな障壁が存在することが懸念される。そのためCDO Club Japanでは、海外のCDOが持つデジタル化のノウハウを自治体のデジタル変革に取り組む意欲のある首長や議員に提供するプログラムを検討している。

 これに関連しCDO Club Japanは2019年9月、人々が自分らしく生きられる「共生社会」の実現を目指す一般社団法人Publitechと提携した。今後両者では自治体 CDO 関する共同研究のほか、自治体 CDO の設置を促進するために「自治体 CDO の設置支援」や「自治体 CDO のネットワーク化」などに取り組んで行く予定である。

 政府/自治体がCDOを設置することは、同分野でのデジタル技術の活用を大きく加速させると考えられる。自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きに注目していきたい。

水上 晃(みずかみ・あきら)

CDO Club Japan理事・事務総長。大手上場企業で経営企画職を経験後、コンサルティング業界に転身し、デジタル分野の専門コンサルタントとして活動。ICT(情報通信)分野に特化したコンサルタントして、ICTを活用した新しい取り組みを多数実施してきた。具体的には、IoTを活用したビジネスモデルの提案、ビックデータ時代のデータドリブンサービスの展開、ロボットを活用した新しいB2C/B2B産業の創出、デジタルコンテンツプラットフォームをベースにしたソフトウェア流通モデルの創出などがある。