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  • 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法

デジタル時代はなぜ“データ分析力”を求めるのか【第1回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2017年9月25日

 データ分析に取り組むにはビジネストレンドを知っておく必要もある。興味深いことに、日本と海外ではビジネストレンドにも明確な差がある。日本は部品メーカーが多いこともあり注目はIoTである。ところが海外は、まずAI。それにクラウドや次世代の自動車、スマホ、5G(第5世代移動通信システム)へと広がっている。日本でもAIから5Gまで、すべてに注目してはいる。だが企業戦略としてみれば、日本はIoT、海外はAIだ。なぜ米国をはじめ海外はAIなのか?

 答えは簡単だ。AIは儲かるからだ。メーカーがIoTを用いて故障などを予知・予兆をしてもお金にはなり難い。それは製品メーカーが負うべき宿命だからである。逆にAIはブラックボックスであるが故に話が大きくできる。無限の可能性が詰まっている。

 そのAI、あるいはロボットを含めて、人の仕事を奪うという悲観的な予測も少なくない。欧米では「ロボカリプス(Robocalypse:robot=ロボットとapocalypse=黙示録を組み合わせた造語)」という言葉が流行っている。AIを備えたロボットによって人間は仕事を失い、黙示録の予言のように破局が来るという考えである。

 確かに人はAIによって仕事を奪われ、所得の中間層は二局化していくだろう。だが筆者は明るい未来を予想している。かつて、産業革命の前に農業革命で人々の仕事が奪われた。だが、知識を蓄えるために家庭の蔵書量が増え、産業革命以後の新しい社会の原動力になった。同様のことがAI革命でも起こり、暇になった人が家に入り、クラウドワーカーとして次の産業革命・社会変革の力になるだろう。

 今、100~200年前の古い原則に従った社会システムが、ビッグデータやAIに基づく新しい考え方や高度なデータ分析により、姿を変えようとしている。我々が抱える現在の社会問題の解決を図ろうとしている。そのためには、ビジネス界でもビジネスリーダーが適切な分析法を学び、データによるイノベーションを実現しなければならない。これがデータイノベーションである。

 次回からはデータ分析に関し、以下のような話題を取り上げていく予定だ。

  • データ分析の目的、手段、対象
  • データ分析の流れ、プロセス
  • データ分析法の本質
  • 分析経験から得た知見
  • ベイズの定理
  • 心理的な側面(エモーションドリブン型)
  • ビッグデータに関する法則
  • データに関するリスク管理
  • 科学的手法(ロジカルシンキング、トポロジー分析、スパースモデリング、形態素解析など)
  • データのビジネス視点

 これらの話題が、データに様々な形で携わる、すべての読者の参考になれば幸いである。

入江 宏志(いりえ・ひろし)

DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。現在は、ビッグデータのソリューション企業に勤務する傍ら、データ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。

ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。