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- 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法
人の行動・感情を知るために必要な非構造化データの分析【第10回】
会社と社員のどちらに非があるかはコンサルティング領域
7Sフレームワークを礎に、社員や入社希望者のデータを分析すると興味深い結果が出た。実際に退職したかどうかと、退職傾向分析した結果を4つの象限にマッピングしたのが図3である。ここで「陽性」とは、その会社で退職しやすい傾向が強いことを、「陰性」とは、退職し難い傾向があることを、それぞれ示している。
実際の退職者を分布で表すと図4になる。真ん中が、分析によって「陽性」となり、その予測通りに退職した人たちである。右側は、会社に非があって辞めた人、左側はくだらない理由で退職した人だ。会社が知りたいのは真ん中の人たちの傾向値だ。
同様に、継続者を分布にすると図5になる。退職者傾向分析で「陽性」になった人々が分布の左右に表れる。左側は、会社で楽ができ居心地がよいので残留した人、右側は、どんな職場でも頑張れるという個人的な理由がある人である。
このように退職者の傾向を分析すれば。採用コストを適正化できる。会社と社員のどちらに非があるかは客観的に判断しなければならない。だがそれは、客観性のあるコンサルテーションの領域といえる。両者にヒアリングした上で判断せざるを得ない。ただ、データが、もっと集まれば客観的な判断材料になる。
たとえば、ある会社で退職傾向が表れた社員が社会で役に立たない訳ではなく、ほかの会社や異業種に行けば重要な人材になる可能性は十分にある。その意味で業界をまたがった人材の流れも分析できる。
このように非構造データを分析すれば、顧客の満足度調査の結果や社員の営業日報などは宝の山になる。科学的に解析すれば必ず役立つ情報になる。データを取得し保存するだけでは何の付加価値も生まれない。
次回は、データ分析の要となるデータ分析の流れについて解説する。
入江 宏志(いりえ・ひろし)
DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。
ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。