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- 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法
人の行動・感情を知るために必要な非構造化データの分析【第10回】
人の行動は、大きな意味で、明確な要望、何気ない無意識な動き、そして感情から生まれる。こうした行動や感情を表しているデータを入手できれば、ITシステムによる処理が可能になる。
人の行動や感情を表すデータは、以下の4つに大別できる。
(1)明確な要求(デマンド:Demand)のデータ
モノを買ったりサービスを利用したりなど、これまで企業が積極的に集めてきたデータである。従来のITシステムが処理してきたデータの中心である。
(2)意図のない単なる事象(イベント:Event)のデータ
意図を持たない、単なる流れによって発生するデータである。何気ない無意識の動きも当てはまる。
(3)人の顕在化した感情(エモーション:Emotion)のデータ
人が持つ感情のうち顕在化したものを表すデータ。喜怒哀楽も、この領域に入る。
(4)人の潜在的な心理(マインド:Mind)のデータ
人の意識の状態や変化で 潜在的なものを表すデータ。本人も気付いていない場合が多い。
行動・感情を表す4つのデータがシステムのあり方も変える
こうした人の行動・感動を表すデータを、どれだけ意識するか、どれだけ取得できるかで、ITシステムに求められる要件も変わってくる。これまでのITシステムの変遷をみれば、ITシステムは「デマンドドリブン型」と「イベントドリブン型」に大別できた。ここでの「ドリブン」とは「動かす」「駆動する」という意味である。
デマンドドリブン型とは、利用者の要求、つまりデマンドがすでに決まっており、その要求に合致したルールに基づいて動作する仕組みである。
たとえば、「喉が渇いた!」という要求に対し、ボタンを押せば飲み物が出てくる自動販売機や、「現金が必要だ!」という要求に対し、ボタンを押せば現金が引き出せる銀行のATM(現金自動預払機:Automatic Teller Machine)などだ。これらの販売データや操作ログを分析してきたのが従来のITシステムである。
これに対しイベントドリブン型とはイベント、すなわち要求は決まっておらず単なる事象に基づいて動作するシステムである。デマンドドリブン型の例に挙げた自販機の例でいえば、「喉が渇いた!」という要求ではなく、自販機の前をたまたま通りかかった人に対し、その年齢や性別、気温・湿度などをモニタリングした結果から、その人に見合うであろう商品を自販機側から提案するような仕組みである。
要求が決まっていないため、システムを構築する際は、まずは仮説を立て、あいまいなルールから始めるしかない。そのシステムを実際に稼働させ、得られた結果を科学的に分析することでルールを変更し、仮説の精度を高めていく。そのためには、イベントを示すデータを取得し、分析・フィードバックする仕組みが必要であり、その代表例がIoT(Internet of Things:モノのインターネット)だ。
IoTが広がることで、イベントドリブンはさらに分化し、第3、第4のデータである感情や潜在的な意識にも対応できるようになる。将来的には、第3のデータを処理する「エモーションドリブン型」や、第4のデータを扱う「マインドドリブン型」のシステムの登場が予想される。