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元号は時代のブランド、新元号「令和」をブランド分析してみた【第20回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年4月22日

在位中に5つの改元を経験した光格天皇

 2019年5月1日から上皇になる第125代の天皇の祖先をたどれば、119代の光格天皇(こうかく・てんのう)になる。君主としての天皇を意識した傍系出身の天皇として有名で、平成以前に生前退位した最も新しい天皇である。

 光格天皇は明和8年生まれ。元号には「和」が使われている。9歳で即位し、47歳のときに退位して70歳で亡くなられた。退位されたのは3月22日で、令和に代わるのと同じ春である。生まれてから亡くなられるまでに8個の元号が使われている。これが「明和・安永・天明・寛政・享和・文化・文政・天保」だ。在位期間に限れば5つの元号(安永・天明・寛政・享和・文化)を経験している。

 元号が、一世一元制(1人の天皇に1つの元号)になる以前は、代始改元(だいはじめかいげん、天皇の崩御や譲位)以外で改元される大きな理由は以下の3つである。光格天皇の時代の改元は、有名な寛政の改革や天明の飢饉の時期に重なっている。

災異(さいい)改元:天変地異を断ち切るため
祥瑞(しょうずい)改元:吉兆が起きたため
革年(かくねん)改元:特定の年に起こると言われた革命を避けるため

 筆者は、現在の天皇家と関係が深い光格天皇がとても気になっていた。そのため、新元号には、これら8つの文字列を予想していたのである。ちなみに歴代天皇の在位期間ベスト3は、1位が昭和天皇、2位が明治天皇、そして3位が光格天皇である。

元号に「れ」が付くのは令和が2回目

 さて令和をアルファベットにすると「Reiwa」である。明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)に続く元号を表す頭文字は「R」になった。平成31年が令和元年だから、両者の関係は分かりやすい。書類に「H35」とあれば「R5」にすれば良い。余談だが「R25」になれば、かつて聞いたことがある雑誌を思い出す。

 単純に辞書で調べると”令”には「上からの命令」という意味もあるらしい。考えすぎもよくないので、単純に漢字2文字を並べたと解釈しておこう。平成(Heisei)と昭和(Showa)のアルファベット表記からでも、2文字ずつ取れば「eiwa」になり、これに「R」をつければ「Reiwa」である(図1)。なにか連続性が感じられる。

図1:「昭和」「平成」からの連続性が感じられる「令和」

 令和より前には247個の元号がある。その中で、頭文字がRなのはたったの3つ。さらに読みが「れ」になるのは1つしかない。「霊亀(れいき)」である。和同開珎で知られる「和銅」の次の元号だ。

 霊亀元年に即位したのは44代の元正天皇(げんしょう・てんのう)で女帝である。歴代で唯一、女系で皇位継承された天皇になる。つまり、43代の天皇も女性だったという意味だ。元正天皇の在位中に『日本書紀』が成立している。

 令和は『万葉集』から採られたとされるが、万葉集の成立は47代天皇の時代である。なお古事記は43代天皇の際に成立している。

 日本書紀は漢文で、古事記は和化漢文で書かれている。つまり日本書紀は、グローバル化に対応するために海外、特に、大陸に向けて書かれた文書であるのに対し、古事記は国内向けということだ。新元号、令和の下ではグローバル化が、さらに進むであろう。霊亀の時の都は平城京である。奈良時代であり、海外からの仏教文化が発展した時期である。

 上述したように令和は、文字列では異色の「R」を頭にもってきた。そこに、極めて普通の「eiwa」を組み合わせて「Reiwa」にしたと解析できる。Reiwaは、「霊亀(Reiki)+平成(Heisei)+昭和(Showa)」もしくは「霊亀(Reiki)+明和(Meiwa)」だと分解しても興味深い。