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元号は時代のブランド、新元号「令和」をブランド分析してみた【第20回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年4月22日

新しい元号「令和」が2019年4月1日に発表され、この5月1日から令和元年がスタートする。改元も、大きくとらえれば、企業が社名や商品名を変更するのと同じブランド戦略の1つだとみなせる。ブランドは、人・モノ・金・データと並ぶデータ分析対象の5大アセットの1つだ。今回は、ブランド分析の一例として、元号の分析結果を紹介する。当初予定のビッグデータの法則の「振り子現象」については次回に説明する。

 新元号「令和」が2019年4月1日に発表された。後ほど説明するが筆者は、新元号は「明和・安永・天明・寛政・享和・文化・文政・天保」の文字列から取られると予想していた。「和」は当たったが「令」は全くの予想外だった。

元号もブランドと見ればデータ分析の対象に

 改元は、国や国民にとって、とても重要な出来事だ。ビジネスの世界で言えば、社名変更や商品名の変更などに当たるだろう。社名変更は、経営者にとっては一大事業である。このように考えれば、元号は国のブランドの1つに位置付けられ、データ分析の対象になる。

 日本のビジネスはこれまで、「人・モノ・金」の3大経営資源を中心に回ってきた。そこに第4の経営資源として「情報(データ)」が加わる。さらに筆者は「ブランド」も大切だと考える。海外ではブランドをより重視している。米Appleのように、ブランドが経営そのものを指す場合もある。データ駆動型の時代にあっては、「人・モノ・金・データ・ブランド」が経営の5大アセットなのだ。

 ブランドとは、人々が頭の中に作り上げるイメージや想いである。自己表現性、感情訴求性、機能性の3つの要素を持っている。

自己表現性:美、ステータスシンボル、自己主張、世界観、経営など
感情訴求性:喜怒哀楽、安心、感動、感情、居心地、雰囲気、品(ひん)の良さなど
機能性:機能、効用、安全、品質、デザインなど

 これら3要素を分析するのがブランド分析である。無形資産であるため、ブランド分析は容易ではない。ブランドに関する情報群、つまり辞書(情報の塊)が少ないからだ。だからこそブランド分析は企業の意思決定には欠かせない。

 心理学に「プライミング効果」という考え方がある。イメージが良い名前は、イメージを活性化するという意味だ。令和という名称に、どういうイメージを与えるかは何年か待つ必要があるだろう。令和元年、令和2年、令和3年と馴染んでいく過程で形成される。ただ、「R1、R2、R3、・・・」は意外といいかもしれない。

 ブランドは、無形資産であり人々の頭の中に作り上げられる。イメージや想い、引き起こされる感情、記憶など、さまざまなものがブランドに覆いかぶってくる。安心感なのか、ワクワク・ドキドキなのか、ブランドが提供する価値は大きい。ステータスシンボルとして自己主張のメッセージになり、独特の世界観をもたらす。その意味で令和という元号がもたらす情緒的な効果は大きい。

 ブランド分析の視点で見れば、元号は、過去の元号や歴史がデータ化されていれば良い分析対象になる。データ分析者にとっては、分析対象を持っているかどうか、そしてスピード感をもって当たれるかが大切である。元号や歴史に関するオリジナルの辞書を持っているかどうかが重要になる。

元号のブランド分析は自己表現性と感情訴求性が中心

 そこで筆者は早速、元号のブランド分析を実施してみた。元号は機能性が少ないため、自己表現性と感情訴求性が分析の中心になる。なお、元号の機能性としてはデザインがある。「令」の書き方は人それぞれで、ひとやね(ひとがしら)のすぐ下が「一」か「、」かの2種類、その下が「令の下側」か「マ」か「ア」かの3種類があり、その組み合わせで6種類の書き方があるようだ。

 分析の前に、筆者が「明和・安永・天明・寛政・享和・文化・文政・天保」の文字列から取られると予想した理由を説明しておこう。