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人生の岐路に役立つヒトに関する分析【第33回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2020年4月27日

人と仕事との相性を分析する

 最近、AI(人工知能)によってなくなる仕事や生き残る仕事が頻繁に記事になっている。それを目途に将来の仕事を考えるのも1つの方法にはなるが、やはり適職を知りたいところだろう。

 第5回で因子分析を紹介した。性格診断とも言えるが「知的好奇心」「外向性」「協調性」「良識性」「情緒安定性」を中心に、「異常度合」「建前度合」の計7因子で人の傾向がわかる。それぞれの職場で求められる属性で「知的好奇心」「外向性」「協調性」「良識性」「情緒安定性」の優先順位を決めればよい。

 一見、日常では問題ありそうな性格も、仕事の種類によっては長所になり得る。企業側として入社面談を数多く行ったが、前述した客観的な7因子と、直感的な自らの感性を組み合わせることで合理的な判断ができた。

 転職する場合、辞める時も感情的に判断するのではなく、30項目程度のオリジナルのチェックリスト(仕事内容、勤務時間、年収、通勤時間、オフィス環境、最寄り駅、福利厚生、上司・同僚の評価、将来性など)を作成し、主成分分析をすることをお勧めする(第5回参照)。それぞれの項目について比較結果を重要度で重み付けして分析して判断できる。

 大切なことは転職後、半年程度経ったら、そのチェックリストを見直して再度評価してみることだ。入社してみたら違っていたということも少なくはない。自ら改善できる項目は積極的に変え、もしくは、勤務先に進言することも大切だ。

人と学校との相性(受験)を分析する

 自らに合った学校を選ぶには受験は避けて通れない。もしくは、キャリアアップを図るならば資格試験も必須になる。その場合にも分析は役立つ。自分の子供や、仕事で知り合った人から頼まれて受験に関して分析したことがある。入りたい学校の過去問題を可能な限り入手し、たとえば算数ならば次のようなデータを分析する。

・全体で何問なのか?
・それぞれの問題の傾向は?つるかめ算、旅人算、植木算、年齢算などの出題数

 入手できたすべての過去問に対し、この傾向分析を実施する。年度によって、トータルの出題数は5問、6問、7問とバラつきがある。普通なら、ここまでの分析で終わるだろう。ただ次に必要なのは、その志望中学の数学の教員数だ。

 仮説として、入試問題を作るローテーションが毎年変わり、出題者数が7人だったとしよう。分析してみると、7年のサイクルで循環しているように見える。実際の問題傾向が「A、B、C、D、E、F、G、A、B、D、E・・・」となっている(図3)。

図3:入試問題の分析視点

 ここで、2サイクル目になぜ出題傾向から「C」が消えたのかを別の視点で見ることになる。Cを担当する教師が辞めたのか、病気になって休んだためであろう。ただ、その志望校は私立であり転勤はない。であれば後は、教師の年齢を調べ、その時期に病気だったかどうかを聞き出せばいいだけだ。この方法で、関係者が受験する年に、問題は何問で、どういう傾向の問題がでるかが予測できた。

 過去問を分析すれば、かなりの確度で予測は可能である。筆者自身、外資系企業に勤めていた時期は、社内の資格試験を受ける際に過去問を分析することで効率よく受験勉強ができた。そのノウハウが買われたのか、所属する部署から依頼され受験する社員のために予想問題を作ったが、その適合率は95%以上だった。人が作り出す試験問題には必ず傾向があるので、そこを見破ればいい。

 ここで違った観点で分析する。中学受験では親子面接を実施する学校がある。親子面接は、子供と学校の相性だけでなく、親と学校の相性を見ている。だから、自分の面接には全く緊張しない人も、子供の面接に付き添ったときは、いつもと勝手が違うことになる。筆者の経験から書こう。

 親子面接の際には、母親がPTA活動に参加できるかどうかも判断基準になる。父親である私への質問は1つしかなかった。「どのような職業ですか?」だけだ。敢えて固有名詞は避けて「外資系企業です」とだけ答えた。学校も父親には、お金を払えるかどうかを確認すれば十分なようだ。

 職業柄、どのような親子が合格するのか興味があった。分析したうえでの、あくまでも個人的な感想は、以下の通りである。

 その学校には制服があり、制服のサイズに合わない子供は不合格の可能性が高い。その母親が太っていると、娘も遺伝上や食事の嗜好から太る可能性があるので、これまた不合格になりやすい。

 父親には、あまり学校に口出ししてほしくないから、他人を押しのけて前に出るような父親は敬遠される。集団の待合室から面接会場に行く廊下などで職員が親子をモニタリングし態度を観察していた。そして親子面接に父親が欠席するとハンデになりやすい。面接では、父親は欠席せず、でしゃばらず無口なほうが好まれる。

 一方、母親は積極的でPTA活動にも前向きな態度がいい。子供は緊張していてもよくて自然な姿であれば十分だ。筆記試験は子供の能力を見るが、親子面接は親を評価していると考えられる。

 なお上述した制服であるが、私立中学・高校では制服を百貨店で買う。店頭をみると、制服のサイズぞろえが幅広い学校と、サイズの選択肢が少ない学校がある。服のサイズの種類が少ない学校は、子供の見かけなどブランドを重視しがちだ。前述の親子面接を受けた学校は、このタイプだった。

 逆に、サイズの選択肢が多い場合は、見かけ以外の要素、たとえば偏差値などを重視する。受験する際には、制服のサイズも考慮しよう。

 これらは、あくまでも分析者としての洞察だが、このようなことは、学校やガイドブックでは決して語られない。ただし、学校や時代によって事情は変わる。