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人生の岐路に役立つヒトに関する分析【第33回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2020年4月27日

古典には人が生きるうえで必要な要素が詰まっている

 最先端のデータ分析に対し、古典などは対極にあるように思いがちだ。だが、古典が示す各種の格言は、過去の多数の人間の行動などを記録し分析した結果だとも言える。

 たとえば中国の古典に『菜根譚(さいこんたん)』がある。さまざまな格言が詰まっている。その中でも人間関係で役立つのが以下だ。

 (1) 「恩(おん)は宜(よろ)しく淡(たん)よりして濃(のう)なるべし」
 (2) 「威(い)は宜(よろ)しく厳(げん)よりして寛(かん)なるべし」

 (1)の「恩は宜しく淡よりして濃なるべし」とは、たとえば人を採用するとか人と接する場合、最初に与える報酬などは少なくても、すこしずつ上げていくことが大切という意味である。逆に、最初に高価なものを与えて、時間が経ってからは報酬が悪くなるのが最低なやり方だ。

 (2)の「威は宜しく厳よりして寛なるべし」とは、人が接する態度は最初に厳しく、すこしずつ優しくなるのが理想と言う意味である。人間関係でうまくやっていく古くからの知恵であるが、これを実践するのは難しい。そのため数値化が必要になるが、相手とのやりとりを自分なりに数値化することになる。

  【報酬、福利厚生、研修内容など与えるモノ】:1(淡)~10(濃)
  【接する態度、愛想など相手に与える印象】 :10(厳)~1(寛)

 筆者が、あるテーマの講師を数か月務める場合も、この要素を取り入れている。研修内容を「恩」として考え、1から始め徐々に上げていく。同時に、態度、つまり「威」は10から始め徐々に下げていく。AIのアルゴリズムには、このような要素、つまり倫理感は含まれていないので、人との付き合いでは考慮したいものである。

 外資系企業に勤務してエバンジェリストの立場で年間200回を超える講演をこなした際も試してきた。1時間程度の講演であるが、内容は最初は簡単で時間とともに少しずつレベルを上げていく。一方、態度は、最初は厳しくし、時間とともに愛想をよくするなど、与える印象を少しずつ柔らかくする。

 この方が効果的であったことは、数多くの参加者アンケートのクロス集計(第5回参照)やテキストマイニング(第15回参照)などの分析からもわかった。この理論は子育てでも役立つので試してほしい。

 次回は、5大アセット分析の事例としてメタデータについての分析について解説したい。

入江 宏志(いりえ・ひろし)

DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。

ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。