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- Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか
デジタルが国の競争力と未来を左右する【第11回】
デジタル技術の進化がもたらすデジタルディスラプションは、企業や産業など民間セクターだけの話ではない。国家の競争力にも大きな影響を及ぼしつつある。DBTセンターを米シスコシステムズと共同で設立したスイスIMDの「IMD World Competitive Center」が世界デジタル競争力ランキング『World Digital Competitiveness 2018 Ranking』を発行した。
IMD World Competitive Centerは過去30年にわたり、世界各国の競争力を総合的に評価した世界競争力ランキングを毎年発表している。2017年には、デジタル競争力をテーマにした世界デジタル競争力ランキングを世界で初めて発表した。世界の63カ国を対象に、各国が、政府業務やビジネスモデル、社会生活の変革につながるデジタル技術の採用や追求に、どれだけ積極的に取り組んでいるかを評価しランキング形式にまとめたものだ。
人材、教育、将来への備えの3分野で評価
2018年6月には、第2回目となる報告書『IMD World Digital Competitiveness Ranking 2018』を発表した。デジタルトランスフォーメーション(DX)に深く関係する3つの評価分野について、統計データと、専門家やエグゼクティブへの国際的な調査データをもとに分析・評価・スコアリングし、総合的な順位を決定している。
デジタル競争力の評価分野1=知識
新たな技術を発見し、理解し、実現するノウハウをどれだけ持ち合わせているかが評価対象になる。才能ある人材、教育やトレーニングの質とレベル、科学的な知識や創造力等が含まれる。次の3つの指標から構成される。
(1)人材
(2)教育とトレーニング
(3)科学的集中分野
デジタル競争力の評価分野2=技術
デジタル化技術の開発を促進する政策、規制、投資環境やテクノロジーの枠組みなどを評価対象にする。次の3つの指標から構成される。
(1)規制の枠組み
(2)資本力
(3)テクノロジーの枠組み
デジタル競争力の評価分野3 =将来への備え
デジタル技術の浸透、俊敏性、デジタルトランスフォーメーションに向けた国の準備度合いなどを評価対象にする。以下の3つの指標から構成される。
(1)適応力
(2)ビジネスのスピード
(3)ITインテグレーション
ランキングトップは米国、日本は22位
世界デジタル競争力ランキングの2018年のトップ15を表1に示す。トップ3は、2017年と同じ国々がランクインしているが、順番が入れ替わり、米国が1位に返り咲き、2位のシンガポールと3位のスウェーデンは、それぞれ順位を1つ落とした。
順位 | 国名 | 知識 | 技術 | 将来への備え | 前年順位 | 順位変動 |
1 | 米国 | 4 | 3 | 2 | 3 | +2 |
2 | シンガポール | 1 | 1 | 15 | 1 | −1 |
3 | スウェーデン | 7 | 5 | 5 | 2 | −1 |
4 | デンマーク | 8 | 10 | 1 | 5 | +1 |
5 | スイス | 6 | 9 | 10 | 8 | +3 |
6 | ノルウェー | 16 | 2 | 6 | 10 | +4 |
7 | フィンランド | 9 | 4 | 8 | 4 | −3 |
8 | カナダ | 3 | 12 | 9 | 9 | +1 |
9 | オランダ | 12 | 8 | 4 | 6 | −3 |
10 | イギリス | 10 | 13 | 3 | 11 | +1 |
11 | 香港 | 5 | 6 | 24 | 7 | −4 |
12 | イスラエル | 2 | 25 | 7 | 13 | +1 |
13 | オーストラリア | 15 | 14 | 11 | 15 | +2 |
14 | 韓国 | 11 | 17 | 17 | 19 | +5 |
15 | オーストリア | 13 | 26 | 14 | 16 | +1 |
米国とカナダ、それに欧州の7カ国を合わせた計9カ国が、トップ15にランクインしている。デジタル化への取り組みは、北米と欧州諸国が一歩リードしていることが分かる。
アジア・パシフィック地域からは、2位のシンガポールの他に、11位の香港、13位のオーストラリア、14位の韓国がトップ15にランクインした。台湾が16位、中国は30位である。
日本は22位にランクされ、2017年の27位から5つ順位を上げた。評価分野ごとにみれば、“知識”が18、“技術”が23、“将来への備え”が25である。2018年は“知識”と“将来への備え”において、デジタル化に向けた取り組みが評価されたようだ。
しかしながら、個別の評価内容を見ると、“知識”においては「国際経験が乏しい」、“技術”においては「就労外国人に対する法整備が進んでいない、“将来への備え”では「アジリティーに欠ける」と、それぞれに厳しい評価も散見される。今後の改善余地も多く残った結果になっている。