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- Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか
変貌する世界の教室から将来のデジタルリーダーが生まれる【最終回】
デジタル技術により、凄まじいスピードで進化するデジタルボルテックスの世界にあって、デジタルリーダーには「HAVE(Humility:謙虚さ、Adaptability:適応力、Vision:ビジョン、Engagement:エンゲージメント)」という4つの特性が求められる(第9回参照)。将来、HAVEの特性を持ち合わせ、社会や経済の急激な変化に対応できる次世代のデジタルリーダーを育成するには、教育課程から、いち早くスキルを磨くことが重要である。
成長著しいデジタル社会においてデジタルリーダーとして活躍するには、「STEM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Mathematics:数学)」への関心が重要であることに異論はないだろう。
STEMへの興味をどう持続させられるかが大きな課題
STEMが広く知られるようになったきっかけの1つに、米国のオバマ前大統領が、一般教書演説などで優先課題として取り上げたことがある。しかし、STEMに力を入れればITやデジタルに強くなるという単純な理由からではない。STEMの各要素は密接に関係しており、たとえば、科学で法則性を導き出し、数学で最適条件を数値として計算し、技術で仕組みを作り、工学で設計しイノベーションを起こすからだ。つまり、そのような人材を育てることが、デジタル社会では本質的に重要なのである。
一方で、STEMのダイバーシティに関しては、克服しなければならない課題がある。米Girl Scout Research Instituteは、STEM教育および技術系キャリアに関する女子学生の関心について統計をまとめているが、2019年に発行された報告書では「11歳〜13歳頃までは比較的関心が高いものの、その後、年齢と共に低下傾向にある」とされている(図1)。 教育課程を終え社会に出れば、STEM系キャリアに進む女性の数は、さらに少なくなる。
また米Boston Consulting Groupの報告では、STEM系を専攻した大学卒業生における女性の割合は約36%を占めるものの、STEM系の就業者における女性の割合は約25%と少ない(図2)。STEM系の管理職になれば、女性の割合は約14%にまで減り、STEM系のエグゼクティブともなると、女性の割合は約9%でしかない。
将来のダイバーシティ促進と女性のデジタルリーダーが活躍するためには、教育課程からSTEM科目と技術系キャリアに対して高い関心を持ち続けられるような対策が必要だと考えられる。
欧米では2000年初頭からデジタル社会に向けた人材育成が始まっている
そうした中、米国では2002年、非営利団体「Partnership for 21st Century Skill(P21)」が誕生している。すべての子供達が21世紀に相応しい教育を受け、将来のデジタル社会の発展を担う人材を育てるのが目的だ。Apple、Cisco Systems、Dell、Intel、Microsoft、Oracle、SAPなどの大手IT企業が、National Education Association(NEA:全米教育協会)や個人と共に設立した。
P21では、21世紀のデジタル社会で求められるスキルを「3つのRと4つのC」として体系的に整理し、既存の学校システムへの導入方法を明らかにしている(表1)。並行して、出版物の発行や、無料のオンラインツールの提供、21世紀型教育の研修事業の実施などに取り組んでいる。
区分 | スキル |
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3つのR | Reading=読み |
Writing=書き | |
Arithmetic=代数 | |
4つのC | Critical Thinking and Problem Solving=批判的思考と問題解決 |
Communication=コミュニケーション | |
Collaboration=コラボレーション | |
Creativity and Innovation=創造性とイノベーション |