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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「モデル化」と「協働」で進んできた会津若松市のデジタル化(後編)【第27回】

会津若松市長 室井 照平 氏に聞く8年間の成果

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2020年4月23日

地方の仕事・生活への「新しいスタイル」の提供へ

中村  産学官連携や首都圏企業とのコラボレーションなど産業振興については、今後どのような取り組みを考えられていますか?

室井  まず接点を得るための「ご縁」を作ることが必要です。そして地域への説明も大切なプロセスです。市民の仕事や働く場を生み出していくことが、地方創生につながると思います。

中村  会津に進出して拠点を構える企業は、「自社の未来を見つけたい、形にしたい」と期待しています。だからこそ企業も真剣です。これからはメーカー企業やサービスビジネスの事業会社などが会津地域に実証フィールドを求めてやってきます。次世代のビジネスを実現するための「場」として、政財界の全体が会津地域に期待をしています。

室井  地域も同様です。一例として、会津の地域のものづくり企業のネットワーク「会津産業ネットワークフォーラム(ANF)」と連携したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)プロジェクトなどが始まっています。共通プラットフォームを構築することで、企業の枠を超えた価値の創出と生産性向上を図っています。

 商工会議所も「ICTオフィス スマートシティAiCT」で勉強会を開催しています。金融、小売り、流通など各部会の活動も活発です。

中村  デジタライゼーションの基盤としてのプラットフォーム(都市OS)は整備できてきました。これからは第2ステージに入ります。AiCT入居企業と地域企業のコラボレーションが、そこかしこで発生してきます。製造業における生産性向上も具体的に見えてきました。

 地場の企業が「高度な技術を持っているにも関わらず、大企業の下請けだけのビジネスモデルに甘んじていた」という構造から脱し、自ら主導できるビジネスへの着手が進んでいます。新しい主役が誕生しつつあります。

室井  その文脈でいえば、これまで一般的に地方都市では「首都圏よりも仕事が少なく、給料が安くてもしかたがない」と考えていました。しかし今の私は、そうは思いません。「首都圏で働くことと遜色ない、しっかりとした給与や待遇を得られる産業を地方で育てて行くことが必要だ」と考えています。

 私たちの取り組みによって「地方で仕事や生活をする新しいモデル」や「地方で暮らす新しいスタイル」を具現化したいと願っています。QoL(Quality of Life:生活の質)を含め、より良い待遇を提供できれば人が集まるようになり、その過程で人材が育ちます。育った人材が次のステージを描けるようにしていきたいと思います。それが地方創生の目指すところです。

自分のデータは自分や家族、地域のために活用する

中村  昨今「デジタル民主主義」というキーワードが提唱されています。市民が自身のデータを自らの意思で地域の発展や次世代のためにスマートシティ運営組織に提供し、活用されることがキーポイントです。

室井  そうですね。データを提供したことが結果的には自分たちのQoLの向上といった形で返ってきます。「データは自分のものであり、“自分のため”のものである」という理解の促進に努めたいと考えています。

 モデルづくりへの挑戦は続きます。変化の中では「どう変わるか」を考えることが大切ですし、会津若松市もITというツールの進歩に適応しながら発展していける都市でありたいと思います。

中村  「挑戦し続ける」には、猛烈な努力が要求されるように思われがちです。ですが会津若松市の職員の方々は、デジタルにすっかり馴染まれ、「IT活用は当たり前で日常的なこと」と感じられていると思います。他の自治体の方々が視察に訪れると、みな驚かれますね。

 2019年秋には約50の自治体へ内閣府からスーパーシティへの要望書が提出されました。会津若松市も、その自治体に含まれています。

室井  はい。副市長を中心に取り組んでいます。内閣府からも情報をいただきながら、地方創生の第2期で目指すべきものとして、しっかり取り組んでいきたいと思います。

中村  いい「流れ」ができているように感じます。モデル都市として、これからもスマートシティの取り組みをリードしていきましょう。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、オープン系ERPや、ECソリューション、開発生産性向上のためのフレームワーク策定および各事業の経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて設立した福島イノベーションセンター(現アクセンチュア・イノベーションセンター福島)のセンター長に就任した。

現在は、震災復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中からの機能分散配置を提唱し、会津若松市をデジタルトランスフォーメンション実証の場に位置づけ先端企業集積を実現。会津で実証したモデルを「地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)」として他地域へ展開し、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。