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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

ソフトバンクが「会津若松デジタルトランスフォーメーションセンター」を設置した理由【第33回】

ソフトバンク 法人事業統括シニアテクノロジーエグゼクティブ 石岡 幸則 氏に聞く

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括)
2020年11月19日

スマートシティは地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)であり、日本全体のDXとして重要なテーマである。日本型スマートシティのモデルを確立し全国へ広げていくためにも、“現場”からの知恵や経験をまとめた提言を、日本のDXをリードするために設立される「デジタル庁」に伝えることが重要だろう。ソフトバンクの石岡 幸則 氏は、まさに日本のスマートシティ推進のキーパーソンの1人であり、ソフトバンクのDXビジネスを担うリーダーである。「会津若松デジタルトランスフォーメーションセンター」を置く拠点として会津を選んだ理由や狙いを聞いた。(文中敬称略)

中村 彰二朗(以下、中村)  アクセンチュア アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター共同統括 中村 彰二朗です。

 行政をはじめとして日本全体のデジタル化をリードする組織として「デジタル庁」の創設が発表されて約2カ月が経ちました。デジタル庁は、日本の情報通信政策を省庁横断で一元化するという、菅政権における看板政策の1つです。諸外国と比べ遅れていた日本のデジタル化を「ここで挽回したい」としている平井 卓也 大臣のリーダーシップに、私たち民間企業も強い期待を寄せているところです。

 2021年の発足が予定されているデジタル庁は、「デジタルを日本全体の国民・市民のものにする」ための大きな取り組みです。同庁が国全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていく方針と、私たちが会津で引き続き取り組んでいく内容は、おそらくつながってくるでしょう。デジタルコミュニケーションプラットフォームについて、国の「データ連携基盤」と、私たちが言うところの「都市OS」によって、市民生活をより良くするデジタル化の加速が期待されます。

 そうした中、ソフトバンクもDX事業に本腰を入れておられますが、スタートはいつ頃だったのでしょうか?

石岡 幸則 氏(以下、石岡)  ソフトバンク 法人事業統括 シニアテクノロジーエグゼクティブの石岡 幸則です。当社のDX本部は2017年に発足しました。もともとは新規事業開発を目的に発足した部署ですが、ソフトバンクとして「私たちだからこそできることは何か?」を考え抜いて行き着いたのが、「日本の社会課題に向き合い、解決に挑戦していこう」というものでした。

写真1:アクセンチュアのデジタル戦略アドバイザーも務めるソフトバンク 法人事業統括 シニアテクノロジーエグゼクティブの石岡 幸則 氏

会津の「本部」は本社の出先機関や下部組織ではない

 3年前に会津を訪問し、中村さんと初めてお会いして以来、デジタルをどのように社会実装し、日本を変えていくかについて、会津の方々、そしてアクセンチュアの“本気度”を強く感じました。会津に来たことで、東京から見る景色とは全く異なる見え方で日本を捉え直すこともできました。

 だからこそ我々もDXの「本部」として「会津若松デジタルトランスフォーメーションセンター」を会津に置く決断をしました。ここは東京本社の出先機関や下部組織ではなく、文字通りの「本部」です。事業の意思決定と実行の場として活動し、デジタルの実証と実装、他地域への展開も、ここを拠点に行います。もちろん、他のあらゆる組織とも連携します。

中村  素晴らしいですね。これまで多くの日本企業は、地方拠点を支店や営業所として本部の下部組織にしてきました。しかしアクセンチュアでは、東京と会津のオフィスは“役割”で分かれているのであって、その関係性は対等です。ソフトバンクも同じなのですね。

写真2:アクセンチュア アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター共同統括 中村 彰二朗

石岡  ソフトバンクにとってのDXは、新たな事業の柱になると期待しています。5G(第5世代移動体通信)に代表される通信基盤とネットワークやクラウドのほか、グループ会社が持つポータルの「Yahoo!」から、今後経営統合が完了すると加わることになる、8000万ユーザーを持つ「LINE」といったコミュニケーションのインタフェースまで、ソフトバンクの“持ち味”といえるような強みを組み合わせながら、日本の課題解決に貢献していく考えです。デジタル、テクノロジー、アイデアを最大限に活用していきます。