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アジャイル開発に向けたITベンダーの選び方【第5回】

梶原 稔尚(スタイルズ代表取締役)
2019年1月30日

軌道修正を歓迎できることがパートナーシップの鍵

 そもそも事業会社とITベンダーのパートナーシップとは、どのような状態を指すのでしょう?筆者は「最終ゴールを共有できていること」「その関係を長く維持できること」「継続的に利益が確保できること」が最低限の必要条件だと考えます。

 最終ゴールの共有とは、事業会社の目標であるビジネス面での成功を目指すことが、そのままITベンダーの利益にもつながるということです。ゴールが共有されるからこそ、パートナーの関係を長く維持できるわけです。

 本連載では一貫して、リーンスタートアップ手法によるビジネスゴールの追求を訴求してきました。リーンスタートアップの鉄則は次の4つです。

鉄則1:仮説をできる限り低コストで素早く形にし、必要最小限の製品として顧客に提供する
鉄則2:製品が受け入れられるかどうかについて顧客からフィードバックを得る
鉄則3:フィードバックの結果を元に改善や軌道修正を繰り返す
鉄則4:そもそもの仮説が誤りであれば、ダメージが少ないうちに進路を変更(ピボット)する

 成功への王道は、変更を恐れず、正しい方向への軌道修正を歓迎することです。このことをITベンダーと共有できるかどうかがパートナーシップ構築の鍵を握ります。それには、ITベンダーとの契約内容が重要になりますが、それは次回に触れるとして、パートナー候補のITベンダーは、どのようにすれば見つけられるのでしょうか。

規模よりも得意分野で絞り込む

 当然のことながら、デジタルシフトのためのパートナーですから、そのための開発に必要な技術要素を得意分野に持つことが大前提です。図2に、デジタル化の対象分野と、それを実現する技術的な要素をおおくくりですが、まとめてみました。

図2:デジタル化の対象分野と技術要素

 得意分野について、すでに付き合いがあるITベンダーに相談すれば、それが大手システムインテグレーターであれば必ず「当社も、それは得意としています!」と言ってくれるでしょうし、そのような部門や技術者を紹介してもくれるでしょう。

 しかし筆者は、そのような受け身の姿勢では自社の将来を託せるだけのパートナーを得られる可能性は低いと考えます。要素技術のトレンドをきちんと理解し、それを実現してくれるITベンダーを、事業会社が主体的に動き、広く日本全国から探し出す必要があります。特にデジタルシフトのための開発領域では、ITベンダーの規模ではなく、得意分野で絞り込むことが重要です。

 では、そのようなITベンダーは、どのように探せばよいのでしょうか?筆者がお薦めする一番の近道は、ITベンダー各社が出展するカンファレンスやセミナーに積極的に参加することです。

 たとえばIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に取り組むのであれば、「IoT カンファレンス」といったキーワードでネット検索するだけで、IoTをテーマに掲げる展示会が、毎月のように開催されているのが分かります。そこへ出かけて行って、展示内容を見学し、積極的に質問してみれば良いのです。